『テトリス99』初めてテト1取った記録
人生を振り返ってみて何かの“1番”になった記憶というものがない。
記憶がないのだから当然記録もない。
そんな僕が今日、『テトリス99』で一等賞の“テト1”に輝いたのだから、それはもうのび太が「今日の感動を忘れぬよう日記に書いておこう」(ドラマチックガス)と考えたごとくブログに記録しておくべきと思うのだ。
『テトリス99』とは
まず『テトリス99』の説明をしておく。
みんなご存知『テトリス』を、インターネットを介して99人同時プレイ、最後のひとりになるまで戦うバトルロイヤル・テトリス・ゲームだ。
Nintendo Switch専用ソフトで、PCやPS4などとのクロスプラットフォーム機能はない。月額300円のNintendo Online会員であれば無料でプレイできる。
(ゲームセンターのテトリスは1プレイ100円なのだから1ヵ月に3回プレイすればオンライン会員のもとは取れる計算になる)。
古の『テトリス』しかご存じない方は「『テトリス』で攻撃?」と思うかもしれないが、こちらがたくさんの列を消すと、相手方に下からお邪魔ブロックが湧いてピンチになるという仕組みだ。
ブロック(テトリミノ)落下速度が増してくると、ただでさえ泡を食ったようになる『テトリス』がさらに邪魔されるようになって、しかもそれが99人同時プレイになるのだから、お祭り騒ぎというか、しっちゃかめっちゃかというか、上へ下へのブロック地獄という様相を呈する。
勝てない
ルールは通常の『テトリス』同様で難しいことはなく、降ってくるブロックをひたすら揃えて消し続けるだけなんだけど、これが、まあ、勝てないこと、勝てないこと。
読んでいらっしゃる方の多くは「いやいや、言うて『テトリス』でしょ?w」と思うことと思う。
僕も実際にプレイするまでは「すぐ1位取れるだろう」と甘く見ていたのだ。
ちなみにこの1位のことを『テトリス99』では“テト1”という(『PUBG』では“ドン勝”と言ったり『フォートナイト』でビクロイと言ったりするのと同様)。
「俺に『テトリス』をやらせたらちょっとしたもんだよ」とを思っている人はおそらく日本に2000万人はいる。
このテト1が、やってもやっても、プレイしてもプレイしても、ブロックを積んでも消しても積んでも消しても、全ッ然取れない。
勝てない。
負け続ける日々だ。
なにしろ敵は98人いる。
バトルロイヤル形式なので、弱い人から消えていき、最後にはほぼかならず1対1の形になる。
その1対1の相手は、その時点で、自分と同様、ほかの97人を蹴落としてきた実力の持ち主だ。
だから、99人同時プレイをして、50位以内に入ることはまあできる。20位以内、10位以内にはいることもしばしばだ。
だけど、プレイヤーが残りの10人くらいになってから、本当に厳しい。挑んでは跳ね返され窒息死する日々。
中毒性の理由
『テトリス99』の中毒性はちょっとほかにない。
もちろんもともとの『テトリス』がシンプルなルールとゲーム性で世界中でブームになるほどの中毒性を持っているし、それに拍車をかけているのが「もう一回だけ遊ぼう」とさせる仕組みだ。
とにかく、どういう負け方をしても、「あと一回だけやろう」と思ってしまう。
ゲーム開始直後、わけがわからないままに集中攻撃を食らったときは「いやいまのは何かの間違い」だと思ってすぐにリトライしてしまうし、10位以内に入ってからやられたときは「ああ、ちくしょう、あともう少しで勝てた。勝利に小指が引っかかっていたのに」と悔しくなってプレイしてしまう。
図で表すとこうなる
- 下位で負ける→いや、いまのは間違い→結論Aへ
- 中位で負ける→次行こう次→結論Aへ
- 上位で負ける→ああ~惜しかった~~!!→結論Aへ
結論A:もう1回だけ遊ぼう
……図か?
とにかくこういうアルゴリズムで、たどり着く結論は「もう1回プレイする」という地点なのだった。
あまりに時間とエネルギーを吸い取られるために、「50位以下で負けた場合はその日の集中力を使い果たした証拠なので諦めて寝る」という独自の縛りプレイを課した。
いよいよその日が
そうして歯噛みしながらプレイし続けること幾星霜。
これまで数度しか取れなかった2位が取れた。
前回2位になったときは「こいつに勝ったらテト1だ!」と肩に力が入り、緊張してミスを連発して自滅した。
(置きミスすると如実に影響が出てリカバリーできずそのまま負けてしまうのも『テトリス99』のおもしろいところだ。ミスって負けたときは「いまのはな、いまのはちゃうねん、ちょっとしたミステイクやねん」と思わず関西弁になってリトライしてしまう)。
だけど今日は、横目で『鉄腕DASH』を眺めながらプレイしていた力の抜け具合がよかったのか、最後の1対1になってもそれに気づかないくらいに集中していた。負けたあとも「あっ2位だったのか、惜しかったな」というくらいで精神的ダメージも少なかった。
その後何度かプレイを続け、ひと桁位以内から20位くらいまでを行ったり来たり。
最後のプレイも流れはよかった。
攻撃方法は“カウンター”に設定したままで、特別なことはせずに自分のテトリミノを消していくことだけに集中していた。落下速度が速くなって盤面が込みがちな終盤も、オジャマミノに邪魔されながらも冷静に消せるところを消していく。
残り10人。
自分が列を消したことで、相手方に出たオジャマミノが他プレイヤーを圧死させた「キンコン」という音が小気味よく聞こえる。何人か脱落させたらしい。手に入れると攻撃力が上がる“バッジ”が画面内を飛んでくる。
詳しい残り人数を確認している暇はない。
自分の積んでいるミノの形、次に降ってくるテトリミノ、その次に降ってくるミノを一瞥する。ブロックが4つ一列に並んだ“テトリス棒”がいつ降ってくるかが勝負の鍵になる。
敵からのオジャマミノで、すでに画面は8割方埋め尽くされている。
あと少し押し込まれると負けてしまう。
それでも、まだ負けていない。
消せるところを消すんだ。
1列、2列、相手に攻撃するというよりただ息をするために消してその場をしのいでいく。
そうして、来た。テトリス棒が来た。
盤面には、相手から押し上げられたオジャマミノがテトリス棒1本ぶんだけ隙間を残して積み上がっている(大きな攻撃を食らったときは、一気に消せるような形でオジャマミノが上がってくるから、逆転しやすくなっている)。
僕の処理能力では、ゲーム終盤になるともう十字キーの下(落下速度上昇)や十字キー上(落下場所がすぐに確定)を使う余裕はない。ひたすら回転させて時間敵猶予を作り、ハマるところにハメていく動物的なプレイになる。
しかしその動物的場当たりをしているあいだにも次のテトリミノの色(形)をちらっと確認して最善手を追求する。
数列消してテトリス棒を待つ。
テトリス棒が来る。
テトリス。
数列消してテトリス棒を待つ。
テトリス棒を待つ。
テトリス。
追い詰められていた盤面は必死の挽回で中段まで押し戻し、ちょっと息がつける広さができた。
ぱっと周りをみる。
気づけば、自分以外のプレイヤーはあとひとりになっていた。
2位確定だ。
相手の盤面は、2回のテトリスでかなり追い詰められている。
あとひと押しで“テト1”が手に入る、かもしれない。
自分の手もとには、あと一度、テトリスができるように積んである。あとはテトリス棒が来るか、来ないかだけだ。
来た。
残された1列の空白にそっと差し込む。
テトリス。
僕の盤面は数個の消し残されたテトリミノ以外にすっからかんになる。
積み上げられたテトリミノは自分を苦しめると同時に攻撃の砲弾でもある。
僕の弾薬庫は空になるまで撃ち尽くした。
逆に、僕が送ったオジャマミノを資材にして、相手がまた押し返してきたらつぎはもう跳ね返せないかもしれない。
頼む――と祈ろうとした刹那、
バタンッ
と音がしてすべてが消えた。
数個残っていたはずのテトリミノも、たったいま降ってきたはずの何もなくなった。
一瞬、何が起きたかわからず混乱する。
混乱するのも仕方がない。
それは、これまで見たことがない画面だったのだから。
もう残っている人はだれもいない。
1位。
数瞬後、画面に“テト1”と巨大なエンブレムが現れた。
1位を取ったのだ。
これが初めてテト1を取ったときの記録だ。
その後
心のなかで小さくガッツポーズをして、スクリーンショットをたくさん撮った。
初めてのテト1を取るまでに何回プレイしたかはわからないけど、おそらく20時間前後は費やしたはずだ。
ようやくそれが報われた。
これでようやく、「あと1回だけ」の結論Aに達するルートから外れて、「満足した、やめる」と言うことができる。
おもしろいゲームというのは呪縛に近い魅力がある。
ようやく呪いが解けた。
かと思いきや、新たなステージが開放された。それは、テト1を取った経験がある者のみが入れる“VIPルーム”だ。
98人のプレイヤーを圧倒したものが集う部屋。
いきたくねえよ、そんな部屋! と、いまは思っている。
だけど、明日にはきっと挑戦をして、「あと1回だけ!」と、新しい、楽しい呪いを身に受けている自分も、見える。
振り返り
最後に、ようやく“テト1”を取れた要因を自分なりにまとめておく。
最大の要因は、運と流れだと思う。
終盤に立て続けに倒して攻撃力が上がるバッジが手に入ったこと。
(あまり序盤にバッジを手に入れてしまうと、“バッジ狙い”のプレイヤーの標的になってしまうことがある)
最後、1対1になったとき、ほしいところでテトリス棒が来てくれたこと。
もちろん、いくらか先を読んでテトリスで消せる環境を整えることができていたとしても、結局欲しいときに来なければどうしようもない。
(そういう意味ではちょっと麻雀に似ていて、ペンチャンで待つより両面で待つ
みたいな置きかたをしておくのが攻略法のひとつではあると思う)
だから最後の攻防時には欲しいときに欲しいテトリミノが来た気持ちよさがあった。
というわけで、“テト1”を取るコツは運と流れです。
それが結論です。
……というのを結論にしてしまってもいいのだけど、それだとあまりにもあまりなので、すこしだけ自分の偉かったところを書いておくと、いい運と流れが来るまで嫌気を刺すことなく飽きずに続けたことかなと思う。
あとは、諦め悪く粘ったこと。
「10位以内にはそこそこ入れてたまには2位にもなれてるんだから、繰り返しやってればそのうち取れるだろう」と思って毎日チマチマやっていたその考えが結果的に正しかった。
そういう考え方は「じゃあ後は試行回数増やして繰り返すだけじゃん」となってやる気がなくなる可能性もなくはないんだけど、今回はそうならなかった。『テトリス99』が楽しかったから。
どうやら僕の場合、楽しく遊ぶこと以外に上達の道はないようだ。
今日は気分よく眠ろう。