明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

映画『アラビアのロレンス』観た

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画像は新・午前十時の映画祭『アラビアのロレンス』解説ページ。

公開は1962年と半世紀以上前の古い映画ですが
ずっと観たいと思っていたのでいい機会と思い、見てきました。

素晴らしい超大作で、映画館で見られてよかった。
感想をつらつら書いていきます。

ページでは主演のピーター・オトゥールは09年で77歳…と紹介されていますが
昨年(2013年12月14日)に亡くなられているそうです。おお、2ヶ月前。


【あらすじ】

イギリス陸軍少尉のロレンス(P.オトゥール)は、オスマントルコへの反乱を企てるアラブの王子と出会い、独立闘争を支援することに。ゲリラ戦の指揮をとり、次々と勝利を収めるロレンスだが、やがてアラブ人同士の争いや国同士の思惑に翻弄され、孤立していく。

…と、上記ページに書いてあります。

なにしろえらい長い映画で、またそのテーマも複雑なため
バツーンと粗筋を短く的確に紹介するというのが難しいですね。

観た印象のあらすじとしては

英国軍に所属するロレンスがアラブに行って土地の部族と結託して
トルコ軍と戦ったりしてトラウマを抱えてPTSDになってイギリスに帰って
バイク事故で死ぬ(冒頭のシーン)。


という感じです。
いやあの、本当はもっといろいろと深い映画なのですが。


【感想】

●長さについて

上映時間227分ってすごいよね!


「午前十時の映画祭」はその名の通り午前10時に上映が開始されるのですが
(実際は広告が入るので10分後くらい)映画館出たら午後2時でしたからね!

10:00から14:00を使ったらもう、なんか一日映画見て終わった… て感じになります。

でも一日使っても見る価値のある映画でした。
しかも1,000円ポッキリ。


●見る前のイメージについて

この映画に対して持っていた前情報というのが

「砂漠ロケを敢行してとにかく映像の美しい映画で、テレビが普及して映画がテレビで放映されるようになっていくとき『この映画の映像美を小さなテレビ画面で味わえるわけがない!』と制作者たち(?)がテレビ放映に最後まで反対していた」…。

という逸話くらいだけだったので、映画の内容も

月の~ 砂漠を~ はるばると~♪

ってなほのぼのと牧歌的な雰囲気の環境映像に近い映画なのかと思っていました。
だってなんか『アラビアのロレンス』っていうタイトルも千夜一夜物語とか
アラビアン・ナイト』的でちょっとこう、夜の砂漠の静けさを感じさせるような
ロマンチックな響きやん?

そしたらなんとこれ戦争映画だったんですね!

いや砂漠の映像が美しいだけの牧歌的な雰囲気のシーンも多く登場するはするのですが。
しかし砂漠に牧歌などないのだから砂漠に牧歌的な風景というのは存在しないか。
まぁ瑣末なことはいい。

前半は排他的な性格を持つアラブの部族と親密になり
トルコ軍の占領する港町「アカバ」を攻撃する勇ましい砂漠冒険譚という感じになり
映画後半では戦争と兵士のトラウマ(PTSD)、アラブの独立と部族対立…という
現代にもそのまま存在するようなハードな社会派映画の面影すら有ります。
だからトータルとしては…

全然牧歌的じゃねえの!


いやまぁ、それは全然いいのですが。こちらが勝手に勘違いしていただけですので。
それでも前半の、100頭のラクダに乗った兵士たちが
曲刀を振り上げて疾走する戦闘シーンは中世的な迫力があって息を呑みましたね。

オール海外ロケ! 100頭を超えるラクダ! 馬! 列車爆破! 脱線破壊!

一体いくら制作費を使ったんだ…。

と思わせられます(軽くググッたら1500万ドル≒15億円ほどだとか。安い? 昔だからか)。
(公開当時の1ドル360円計算だと54億円…こっちのほうがそれっぽい)


●映像美について

やはり最初に特筆すべきは、評判通りの映像美で
アラビア砂漠の地平線に沈む夕日、昇る朝日、太陽の赤と砂海の白が描くツートン。
その中を横切っていくラクダのシルエット…。


この映像美は半世紀経った今でも圧巻の一言ですね。
時代的に当然CGも使わず、フィルム撮影の味のある質感での映像は
やっぱり巨大なスクリーンで見たほうがいいだろうなと思います。

おそらく、営業的な面でそう多くの観客は見込めないということで
この映画館では小さめのスクリーンでの上映でしたが(それでもポチポチ入ってた)
大きなスクリーンであればあるほど美しい映像が堪能できるかと思います。

だからやっぱり、テレビで映画を見るなんてことは考えもしなかった
映画が映画でいられた幸せな時代の作品だったのではないかと。思います。

スクリーンいっぱいに描かれる砂漠の壮大な情景には圧倒されますよ!

家で見るなら50インチくらいのプラズマでブルーレイで5.1chでサブウーファー付けて…
なにしろできうる限り最高の環境を整えるのがこの映画に対しての礼儀ですね。
でもたぶん家だと集中力切れる。後半は内容的にもちょっとしんどいし。


●史実との関係について

イギリス軍人・ロレンスがアラビア砂漠を舞台に八面六臂の英雄的活躍をするので
どこまで史実なんだろう…と軽く調べてみましたがやはりロレンスさんは実在の人物らしいですね。
まぁ、戦いにおいてどこまでリーダーシップをとっていたか、など本当のところはわかりませんが。

アラブの部族を口八丁というか舌先三寸で丸め込むイギリス人の二枚舌さが
よく描かれていました。

(と思ったらWikipediaでは「イギリス人の三枚舌外交」とか書かれてんの。笑)

これは現在のパレスチナイスラエル問題にもそのままつながってくる内容で
やはり興味深く見られます。


●長さについて2

作品の総体としては非常に面白く、映像も美しい素晴らしい映画なので
227分という長さも気にならない…といえば嘘になってしまいますが
まぁ面白いドラマをDVDで4話くらい一気に見たり
アニメをワンクール分(12~13話)を一気に見たりというようなことはないでもないので
のめり込んで映画を見ている分には、長さは大きな障害にはなりません。

(だから逆に、もし小さいテレビ画面でこの映画を見て、作品にのめり込めなかったら227分という長さの映画を見るというのは大変な苦行になるかと思います)

で、この映画にのめり込める理由としてひとつ思ったのが
あまり作品の中で、現在のシーンについての説明をしないんですよね。

もちろん集中して見ていれば
主人公たちが今何をして何を目的に動いているのかというのはわかるのですが
テレビドラマのように改めてそれを繰り返しセリフで説明するというようなことはありません。

だから観客は「いまこいつら何のために動いてるんだ、次はどうするんだ…」
作品に対して能動的に鑑賞することになり、そうすれば自然と映画にのめりこんでゆけます。
そしてそうなれば、時間の長さも気にならなくなる…と

これは外界と隔離されて作品にだけ集中できる映画ならではの作り方で
CMが入ったりザッピングしたり「放送途中から見る」なんてことが許されてるテレビドラマと映画はやはり根本から違うのだ… と思える作り方です。

やはりこれは「映画らしい映画」で
そういった作品はテレビではなく劇場のスクリーンで楽しむべきものだと。思いました。


なにしろ超大作を味わい終えた後に訪れる心地よい倦怠感に浸る時間というのは
よいものです。


感想としてはそんなところですかね。
長かった。
面白かった。

あとは

●瑣末な感想


・女が出てこないの!


株主優待で生活している元プロ棋士の桐谷さんは
毎年映画を100本だか200本だか見る映画通で、その評価基準は

「美女が出ているかどうか」

というのをひとつ大きな基準にされているそうなのですが(眼から鱗が落ちる思いだ)
その点から言えばこの映画は落第。笑。
まぁ女性を出すような内容じゃないようということもあり、女優がほとんど出ません。

主人公もアラブの独立と民主化に奔走するのですが
女性(の人権)については全く無関心。ノータッチ。まぁそういう時代&地域ですからね。
現代の視点から見るとちょっと面白い差異を感じました。


・宮﨑駿っぽい…というかジブリっぽいシーンが多数

シーンだったりキャラクターだったりなのですが。
主人公の上司がでっぷり超えた丸い体型にカイゼル髭という
天空の城ラピュタ』に出てくる軍人っぽい背格好だったり
ラクダで砂漠を渡った時の廃屋に到達するシーンは『風の谷のナウシカ』の冒頭で
ユパさまが「ここもじき腐海に沈む…」というシーンを思わせたり。
ワイワイガヤガヤ出るモブがやたらと密集してモゾモゾと動いたり。

なんか宮﨑駿監督ってこの映画好きなんじゃないかなーと思うシーンがありました。
まぁ、勘ですけどね。


・「新・第二回午前十時の映画祭」(もうなにがなんだかわからない)について

4月からまた新しくなる作品とスケジュールについても情報が公開になっているので
また面白そうな作品がやっているときにタイミングが合えば見てみたいと思います。
1,000円ですしね。


・「あなたはただの将軍。私は国王になる人間」

アイ、マスト、ビー、ア、キィング。

というセリフが良かった。
なんでアラブ人が全員英語喋ってるんだと思わなくもないですが
ネイティブでない分(?)ところどころ聞き取りやすい英語で
この映画はなんかリスニングの教材としてもいいんじゃないですかね。

conquer:征服する

とか、大学受験の重要単語もチラホラ聞き取れました。
チラホラね。

面白い時間が過ごせて美しい風景が見られて
オマケに社会や英語の勉強にもなる。
やはり「映画を見ると得をする」のだ。




それにしても
いやあしっかり映画を観たぞ。
満足、満足。