明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

『硫黄島からの手紙』

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内容を忘れないうちに感想を……。
池袋テアトルにて見た。
地下のスクリーンだった。

地下に洞窟を掘って、徹底抗戦だ。
という栗林中将の戦略を味わうのに、
ちょっと窮屈な地下スクリーンはむしろちょうどよかった。

それにしても。
これをアメリカ人の監督が撮れるのがすごいよね。
これが映画の国の矜持というものなのかしら。

以下はネタバレを豊富に含みますのでまだ見てない人は自己責任で。




☆あらすじ☆
時は昭和19年、花の大江戸東京都……から、遠く離れた硫黄島が舞台。
日本軍が守る硫黄島が、米軍に占領されるまでを日本軍からの視点で描く。
連合艦隊はほぼ壊滅状態にあり、米軍は上陸前に圧倒的な戦力差を準備することができた。
その戦力差に日本軍の指揮官、栗林中将が取った作戦が地下に洞窟を掘っての徹底抗戦。
硫黄島を陥とされれば、この島から本土へ爆撃が行く。この島を一日守ることがそのまま本土を守ることにつながる」
栗林は現状をよく理解していた。
この戦いに「勝利」など望めないこともわかっていた。
しかし彼は玉砕を許さずに、
米軍側が「3日で落ちる」と試算していた硫黄島で、一ヶ月以上戦闘を続ける。

しかし補給が無い以上、食料も弾薬も尽きるのは道理だ。
国の為重き務めを果たし得で 矢弾尽き果て散るぞ悲しき
栗林は総攻撃を行い死んでいく。





☆感想☆
戦争はよくないねー。
特に負ける戦争は。
なんかあらすじだけ見ると、国威発揚映画みたいなまあ簡単に言えば右翼的な感じもするんだけどねー。
いやー、全編死人ばっかりでねー。

まぁ、戦争だから当たり前なんですが。

この「当たり前」と感じさせるあたりがすごいところで(おそらく監督のうまいところで)、
死ぬことをヒロイックにしたり、
わかりやすいメッセージにして仕上げてないところがいい!

わりとこう、たんたんと戦争(ストーリー)が進んでいって、
気がつけば追い込まれてて気がつけば総攻撃って感じだった。
もちろんたんたんと進めるっていっても、
とてもたんたんと見過ごすことのできないことばっかりなんだけど、
いちいちそれを演出過剰にしてない。

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ…まぁいちいち演出をつけてたらくたびれてしまうかもしれん。

大体画面の色からしてモノトーン調というか、
白黒画面と言っても過言ではないほどの色身の弱さ。
死んでいく兵士達のドラマに関してもそんな感じ。
薄い色を重ね塗りして絵を描いていくような。

まぁ「薄い色」とは言え戦争映画らしく戦闘シーンはグロイしエグいし、
壕の中で火炎放射器に焼かれるシーンなんかは思わず顔をしかめてしまった。

まぁこの火炎放射のシーンもそうだけど、
きちんとアメリカ軍側のいやらしいところも描いているのがエライ。
最後の米兵たちの振る舞いなんて、
ある意味太平洋戦争というか現代に通ずるアメリカの振る舞いの象徴とも言えるし、
それに二宮君がマジ切れしてしまうのが、
日本人としては強い共感を覚える……んだけど。
そういう「日本人として強い共感を覚える」シーンをよくもアメリカン監督が撮れたものだよ。

特に最後の、総攻撃を仕掛けた後、息もたえだえに栗林中将が二宮君に聞くセリフ
(これは本当にネタバレだから見てない人は見ない方がいいとおもう)



「ここはまだ、日本か……?」



ていうセリフなんかは、
栗林の執念とその義務感、というか使命感を強く感じさせるセリフだし、
見方を変えれば、現代日本への痛烈な風刺とか批判であるともとらえられる。
ここはまだ日本か?
この時代の人間が守りたくて、守るために死んでいったその日本なのか?
今の日本のために我々は戦って死んだのか?
(『ジパング』で草加が感じた強烈な違和感と絶望感みたいなもの/『ジパング』知らない人はごめん)
っていう風にも読めるね、っていう。

んでもね。
そう思うと、
これを本当にアメリカ人が撮ったの?
っていう疑問とも称賛とも慨嘆ともつかない感想がでてくる。

でもこの映画は日本人には撮れないだろうなぁ…
絶対になにがしかの、メッセージ性というか、
「くさい」
ものになってしまうと思うんだよね右寄りになっても左寄りになっても。

でも
イーストウッドは、当初は日本側から描くこの映画は日本人監督に依頼するつもりであった。
>彼と長年共に仕事をしているチーフカメラマンによれば、彼は、今作品の構想を練る際に「黒澤なら完璧なのに」ともらしたという。
>その後、上述したとおり、彼自身がメガホンを取った。
ウィキペディアより引用】

というように、最初は日本人にやらせたかったらしい。
>「黒澤なら完璧なのに」
…………確かに!


まとめるとすごいところは、
大声で言ってないのにしっかり残るテーマ性、
日本人以上に日本人らしい映画を撮った監督、
渡辺健と二宮くんの演技と、中村獅童のへたれっぷり(役のね)。

戦闘シーンも大迫力で、スクリーンで見たい映画。
もう一回スクリーン観てもいい。





以下は余談。

映画館を出て池袋のきらびやかさに
「ここはまだ、日本か?」
と思わず呟いた。

そのあと豚骨ラーメン食いに行って
「めしが食える……?それ、いいな……」
と思わず呟いた。

二宮くんは『拝啓、父上様』でも毎回手紙っぽいナレーションを入れており、
こいつ手紙書いてばっかりやなと思った。

拝啓、父上様』では若くてまだまだ見習いっぽい役回りなのに、
この映画ではすでに一児のパパでちょっとびびった。

前見た戦争映画は『硫黄島の砂』で、
また硫黄島やなと思った。

以上。