明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

国立メディア芸術総合センターは建設中止ですって

イメージ 1

イメージ 2

画像は民主党政権になって中止になる“アニメの殿堂”こと、
国立メディア芸術総合センター」の設計イメージ図。
と、いつだかの読売新聞に掲載されていた、
サマーウォーズ』監督の細田守さんとの村上隆さんの対談記事。
下の方で援用する予定。

で、計画が無くなる段になってからこれを言うのもアフターカーニバル(後の祭り)的な感じが
しなくもないんですが、
この「国立(中略)センター」は本当に無駄なハコモノなのか?
ということについて、少し深く考えてみたいと思います。

ヤフーブログの限界(5000字)ぎりぎりの長文ではございますが、
御用とお急ぎでない方はちょっとご覧になってみてくださいな。

もしくは暇で暇でしょうがねえや! という時にふと思い出してもらって、
時間のある時に読んでみると、
秋の夜長の暇つぶしくらいにはなるかもしれません。
これだけ書いてもロハでございます。

えー…ごほん。

どうやら計画中止になる「国立メディア芸術総合センター」。
建設に反対する意見には以下のようなものがありました。

「予算の無駄遣いだ」
「まーたハコモノか」
「“アニメの殿堂”なんかつくってなんになる」

どれも一理あると思います。

特に、110億円超という予算は、
施設の建設費だけを計上したもので、
中に何を入れるのか? 中に入れるものにいくらかけるのか?
という具体案が無いことにはあまりにもずさんな計画であると言わざるをえません。
まさにハコモノ

だがしかしそれでも。
あえてこの「国立メディア芸術総合センター」は必要である、と言いたい。

せめて
「“アニメの殿堂”を作るとなんになるのか?」
ここを理解していただきたい。

ぶっちゃけ想像力をたくましくして考えた結果ではあるのですが、
結構メリットがあるのではないかと思っています。

それをこれから話していくのですが、
話す前に少し海外のニュース。

<特集 生かせ! 知財ビジネス/中国、日本のアニメ技術者に食指-フジサンケイビジネスアイ
http://www.business-i.jp/news/for-page/chizai/200908310007o.nwc

少し長いですが引用します。

>中国は今、日本のアニメ技術者を上海へ誘致するための準備を始めている。なぜか?

> ≪アニメの殿堂 日本の60倍≫
麻生太郎首相が推し進めてきた東京・台場にアニメの殿堂
>「国立メディア芸術総合センター」を建設する構想に民主党は反対姿勢を示しており、
>先行きは不透明だ。

>反対に中国は今年10月、
>「上海海湾動漫総合娯楽城」を着工する。
>中国のアニメの殿堂、遊戯場としてだけではなく、生産拠点とするのが目的。
>敷地は実に150万平方メートルで、日本の構想の60倍に及ぶ。(中略)

中国ではこんなの作ってます。

さらに中国は、
韓国とも共同で「アニメ産業発展基地」なるものも作ってます↓

中国ビジネス最前線:中韓共同でアニメ産業発展基地を建設-ITmediaエグゼグティブ>
http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/0811/20/news058.html
>中国、韓国が900億円を投じ、アニメおよび漫画産業の発展に向けた国家プロジェクトが動き出した。
>目指すは「アジアのハリウッド」という。

さらにさらに、
こんどはヨーロッパにとんでフランスのニュース。
<漫画博物館オープン、ただしフランスで-スラッシュドットジャパン>
http://slashdot.jp/article.pl?sid=09/06/23/011206

<フランスで漫画博物館オープン 税金投入には反対意見なし-Youtube(FNN)>
http://www.youtube.com/watch?v=oRFTH932CF8


……長々と引用してきましたが、
何が言いたいかというと、

●「アニメ・マンガの博物館は他国ではすでに作られていて、
 中国・韓国はさらに生産拠点も兼ねる“アニメ版ハリウッド”を作ろうともしている」

ということです。
その点、
生産機能のない日本のメディアセンターは計画の時点で中韓に後れを取っていたと言ってもいい。

「世界がやってるんだから日本もやれ」
という風に言いたいわけではありませんが、
まず
①「アニメや漫画の博物館を作ったり、そういったものを“文化”として扱うことはおかしくないと考える人は世界に大勢いる」(特にフランスでは多い)
ということを押さえていただきたい。

さらに
②「中国韓国は国策として税金を使って“ハリウッド”を作って生産体制を強化しようとしている」
ということも大事なポイントです。

①を考えたときに、
日本の失敗の前例を思い出しますと、
貴重な浮世絵が日本の美術館では見られず、
ボストン美術館大英博物館に多く所蔵されているということがあります。
(実際、北斎の「赤富士」は大英博物館で初めて実物を見たよ)
日本の文化財を、
日本人がその価値に気付かずに、
海外へ多く流出させてしまっていたという前例がありますと。

画像2枚目の対談記事から引用しますと、
村上隆さんが細田監督の「作品のすべて」(原画など?)を保存しているという流れの中で、

>村上 離散させないで1個の作品として残す。
>   それが未来に価値を伝えるために最大にして最高の効果が上がる作法。(略)
細田 作り手としては、常に作り続ける活力を維持していきたい。
>   そのためには様々な作品が作られ、その中からいいモノが世界へ出ていく環境も必要だし、
>   大衆文化を世界の芸術史にねじ込んでいくような力も必要。
>   マーケットが大事か歴史が大事かはさておき、
>   文化として考えるべきだということは強く思います。

という意見。

で、
さらに②について考えたときに、
現在はまだまだ未熟といっていい中韓のアニメをはじめとするコンテンツ産業ですが、
今は隆盛を誇る日本のアニメですが、
それだっていろんな問題を抱えていて、
将来的に、
かつて隆盛を誇った日本映画のように衰退しないとも限らないのでは。と思います。

民主党の反対も、
中韓では生産能力もあり計画の何十倍も大型のアニメセンターを計画している、
 日本もただの博物館・資料館ではなく、どうせ作るならより有用な施設にすべきだ」
というような建設的な反対意見だったらよかったのに。
もちろんいつも通りのいかにも「反対だから反対なのだ! それが野党なのだ!」という態度で、
失望させてくれたものでした…しみじみ)

つまり。
今何らかの手を打たないことで、
アニメ=日本のコンテンツ産業の重要な一部が、
将来的に海外のマーケットを失う可能性がある。
という懸念を持っているのです。

国立メディア芸術総合センター」を作らないことによる懸念は以下の2種類に大別されます。

①文化保護の問題
日本は貴重な「浮世絵」を海外に大量に流出させた前科がある。
今では本物の浮世絵が見られるのは海外の美術館がメイン。
さらにかつては隆盛を極め海外的にも高い評価を得ていた日本映画だったが、
無策のまま衰退させてしまった(これは②にも関わるが)。

…「国立~」を作らないことで、
その二の轍、三の轍を踏むことになりはしないか。という懸念。

コンテンツ産業としての問題
アメリカでいうハリウッド映画がそうであるように、
優れたコンテンツというのは非常に有用な輸出産業、
昔風に言えば外貨獲得の手段となりえる。
これまでは製造業メインだった日本だけれども、
これからはそうもいかない。
新しい方法で外貨を獲得していかなければならない。
(観光産業に力を入れて海外からの観光客を呼ぼうという「YOKOSO! JAPAN」もその一環だ)

…「国立~」を作らないことで、
国策として産業を保護している中韓に技術その他の面で追い抜かれ、
将来のマーケットを失うことになりはしないか。という懸念。


まあどちらの懸念も、
国立メディア芸術総合センターをつくれば全部解決!」というものではないんですが、
少しは薄らぎます。
特に資料収集・保全をする施設が1個専門で存在してくれれば、
ずいぶん安心できます。

マーケットの問題でいえば、
むしろこっちの方が深刻で、
いまアニメとかマンガとかの輸出ビジネスの方法ってスゲー未整備なんですよ。
こないだ読んだ
『ル・オタク―フランスオタク物語』(清谷信一講談社文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4062762188
という本によると。

例えばヨーロッパや北米へのコンテンツ輸出に関する法整備だとか、
アジアにはびこる海賊版コミックスや海賊版DVDの撲滅なんかは、
どうしても国がやらなければできない仕事なんです。
(映画の盗撮が日本でも重罪になったのは、
 映画コンテンツを重要な輸出産業と捉えているアメリカからの圧力があったからです)
(映画を見ると予告編の合間に「盗撮は1000万円以下の罰金または10年以下の懲役です」
 ってのが流れますよね)

インターネット上にアップされてすぐ字幕をつけられて海外に流されたりね。
それはそれでいい面もあるとは思うんだけど、
利益をロスしてる部分も確かにあるはずで、
その辺をうまく商売にできるように法整備してくれや。

で、今回その「国立~」ができることで、
国としてアニメや漫画を日本の芸術・文化であると正しく認めて、
そういったこと(法整備や海賊版撲滅)の仕事へも本腰を入れるための橋頭保になるのではという期待がありました。

橋頭保というか、
日本はこれからコンテンツを輸出して商売していくのだ! という、
コンテンツ産業輸出事業のメルクマールというか、
ひとつの砦となる可能性も秘めていたはずです。

ただ作るだけではなくて、
そこからいろいろな発展性があったのではないかと思います。

そのチャンスが今回、
失われてしまうだろうというのが残念です。

アニメや漫画に対する「文化」というイメージの付与、
コンテンツ産業としての保護育成事業・輸出のための法整備は10年くらい遅れる、
後退することになるんじゃないかと思ってます。

麻生総理は日本のソフトパワーコンテンツ産業が持つポテンシャルをよく知っていて、
そういった事業を進めようとしていたのですが、
その辺の真意を報道しないままに、
計画が泡と消えましたと。

様々な可能性がよみとれる施設だったはずなんですが、
その意図も理解せずに「アニメの殿堂」、「国営漫画喫茶」呼ばわりしていた民主党が政権与党になるので、
白紙に戻されるわけです。
ええい、まぁ、民意だ。しゃーない。

「国立メディア芸術センター計画が中止になることについての懸念」
【まとめ】

浮世絵や日本映画のように、
日本アニメも衰退したり貴重な資料が海外に流出したりして、
またも文化を失うことにはならないか。


将来的に海外のマーケットを失う可能性はないか。
現状、整っていないビジネスのためのインフラを、整備するチャンスを失ったのではないか。

こういうことです。
本当はさらに①に関して
「文化」ってなんだろう、
ということについて深く考えてみたかったのですが、
体力と紙面が尽きた