明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

ヘルニア手術の思ひで2

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画像は病院の夕飯に出てきたサカナとナスの煮浸し。
最近の病院食はうまいゾ!


~ここまでのあらすじ~

ヘルニア手術のために入院。
全裸+ただのぬのきれ+給食当番帽子 という、変態みたいな装備で手術台に寝かされ
まな板の上の鯉の気分を満喫しているといよいよ手術が始まるのだった。

~手術開始~

下腹部にイソジン色(エンジ色というか濃い茶色)の消毒液(恐らくイソジン)を塗りたくるとスースーする。
おっ消毒液を塗ったということはいよいよ切るのかな?

医師「メス」
看護師「はい」

というやり取りを期待していたけれど無かった。
というか無言でいつの間にか切られていた。手術を始められていた。
いつ切られたのかわからないがとにかく知らぬ間に割腹させられていたようだ。

自分の内臓をこねくり回されるというなかなかない機会なのだから
せっかくなら手術の様子をちょっと見たいなあと思って顔を下腹部に向けても
青い布を顔の方に寄せられていてそれが邪魔で全然見えない。

「手術しているところは見えないんですか?」と聞くと
「(顔を起こしていられると)体勢的に腹圧とかあるからね」と医師は答えた。
ちぇっ。
「折角の機会だから中身が腹黒いか見てみたかったんですけどね」と小粋なクランケジョークをかます
「黒かったら写真にとって見せてあげるよ」と医者ジョークでもって
鋭く切り返された(実際にメスで切られているだけに)。

麻酔が効いているので当然痛みはない(あればジョークなど飛ばせない)。
メスを入れる瞬間も、なんだか下腹部のうぶ毛を引っ張られているような感覚があるだけ。
おそらくあれが切られている瞬間だったのだろう。

割合クリアな意識の中、医者はおなかをザクザクと切っていく(気がする)。
皮膚と筋肉はメスで、腸とくっついている腹膜(?)はレーザーメス(?)で切っているようだ。
実際に見られていないから確証は持てないけど、Youtubeの動画を見るとそのような手順で行われている。
レーザーメスでジリジリとハラワタを焼かれるのはサンマになったような気分でやや物悲しい。

手術開始から20~30分ぐらい経った頃、医師が唐突に
「ヘルニアには症状が2種類あって、子供のなるヘルニアと大人がなるヘルニアがある」と言った。
そして続けて

「そしてこれはその2つの中間の、思春期のヘルニアだ」。

と言い出した。
はぁ、としか言えぬ。

このあと医師は自分で言ったこの「思春期のヘルニア」という表現が気に入ったらしく
やたら「思春期のヘルニアだ、これは思春期のヘルニアだ」と上機嫌で繰り返していた。
ぼく、ちょっと複雑なきもち。(思春期のように)

「そして究極の選択だけれども、患部にメッシュを入れるか入れないか、今決めてくれ」

そう医師はのたまった。
つまり、筋膜を結ぶだけのやり方(子供用)でも結構行けそうな感じだし
ちょうをはみ出ないようにするための防護用メッシュを入れるやり方(大人用)ならばより安心なんだろうけど
「そこまでするほどでもないかな…」というレベルの脱腸ぷりらしい。

しかし今聞くなよ。
今の俺に訊くなよ。

こっちは文字通りまな板の上の鯉状態(しかもすでにちょっぴりさばかれている)なのに
今そのようなことを聞かれてもまともに考えることもできない。
だってあなた、まな板の鯉に「人生ってなんだろう?」って聞いてみても
そいつは多分ビチビチと跳ねるだけでまともに考えられないでしょう。
当たり前か。

とにかく腹を切られて開かれている(痛みはそれほどないとはいえ)、ある種の極限状態なので
冷静にモノゴトを考えることができず自然と本音がこぼれ出る。

「楽な方……楽な方で……」

恐らく腸もこぼれ出ているので
断末魔のように小声でうめくことしかできない。

もうメッシュを入れようが筋膜を縫おうが知ったことではない。
どっちでもいいから楽な方でやってしまってさっさと腹を閉じてくれ。腸をしまってくれ。
これ以上の本音があるだろうか。
正に「腹を割った話し合い」というべきだ。(ドヤッ。


なんてことを思いながら医師を見上げていると
「楽な方か、うーん。まあ、メッシュを入れておいたほうが再発はないから、大人の方法でやるか!」
と言った。医師は続けて

腹回りに脂肪もついてきてるし!」と余計なことも言った。

ほほほ、ほっとけ! 
しかも結局メッシュを入れるやり方でやるなら俺に聞いた意味なかったろ!
絶対そっちのほうが楽じゃない方法だろ!

メッシュを入れるやり方はYoutubeで動画を見たけど
つまり腸がはみ出さないようにメッシュの膜をおなかの中にグイグイ入れてガードするという方法。
動画ではずいぶん強引にグイグイとつめ込んだり、腹膜(?)を引っ張ったりして
「痛くないのかな…」
と思っていたが、実際にやられてみると…やはり痛いのだった。

麻酔が効いているとはいえアレですよ、おなかの中身をグイグイやられたらそれは痛いですよ!
当たり前ですよ!
当たり前の話ですよ!!

痛みというか強い刺激が腹部にあるのだけど
鈴木史朗は若いころ麻酔なしで盲腸の手術をしたのだ
(「君は日本男子か!」と医者に聞かれて「ハイ!」と答えると麻酔なしでやられたらしい)
と思いだし、それにならって日本男子らしく腹に力を入れて
へその下にある丹田に力を込めて気合で我慢しようとする。
すると医師は言う。

ハイおなかの力抜いてー」。

抜けるか。
ばかもん。

しかし医師に逆らうとこのままのハミ腸状態で放置されないとも限らない。
かといって素直に従い腹の力を抜くとやはり痛みをとても我慢できなくて

「痛い、いたいよう」

と情けなくわめくことになる。
麻酔なしで手術した鈴木史朗に比べると甚だ情けないが実際に痛いんだからしょうがあるめえ。

その後麻酔を増やしてくれたのかな?(そういうことができるのだろうか)
ええいうるせえ患者だなとにかくやっちまえということで手術はグイグイ進んでいった。
もう無言でひたすら耐え忍んでいるとようやく終わった。

「1時間ほど」という話だったがやたら長く感じた。
結局手術は2時間程かかっていた。だまされた。
そりゃ長く感じて当然だ。

帰りは車イスに乗って病室まで帰った。
自分の足で車イスに乗り換えるんだけど
手術台から降りるとき看護師に「麻酔効いてると足元ふらつきますから気をつけてください」と言われた。
そのとおりふらついて転びかけた。

じゃあ最初から支えててくれよ! それかタンカみたいなやつで運んでくれよ!

と思わないでもなかった。
最近の看護師はスパルタであるらしい。

車イスに乗せられて「どれくらい切りましたか」と息も絶え絶えに看護師に聞くと
「ほんのこれくらいですよ」と看護師は親指と人差指をCの形にして小さく開いた。
何かをつまむようにして「せいぜい3~4㎝くらいですよ」と言った。

切られている方の気分としては
胸の肋骨あたりから腰骨のあたりまで、腹をズバーと一気になで斬りにされたような感覚だったが
実際はその程度だったらしい。
しかし今手術跡を見てみると5~6㎝はある。また騙された。

帰りは車イスを押されて病室まで帰った。
病室に戻ると11時すぎだった。


~手術編おわり~

あとは術後の話になりますが
もう少しだけ続くんじゃ。