明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

高岡市美術館の山本二三展に行ってきました(氷川竜介さんの講演も)

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今、高岡市美術館で「山本二三展」という特別展をやっていましてね。
(2012年9月9日まで)

それを見に行ってきていたんです。
なんでも2万人を超える来場者をカウントしたとか。
パネェ。

えーとどんな展覧会だったかと簡単に説明しますと
この山本二三っていうひとはアニメ(映画)の背景を描いたり美術監督をやっている人で
もののけ姫』や『天空の城ラピュタ』、比較的最近ですと細田守監督の『時をかける少女』なんかを
やっていたりします。

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画像は北日本新聞ウェブ版「webun」から。

このサイトは北日本新聞購読者なら
名前とかを登録すると北日本新聞の内容がウェブでも(無料で)見られるという
地方紙にしては割と画期的なサービスではあるのですが
購読者ではない人には記事の紹介も引用もソーシャルブックマークへの保存も何もかもできないという
クッソ不便な面もあってなんだかなあと思わざるをえない。

ええとまあとにかく。
その山本二三というアニメーターというか美術監督の人の展覧会が高岡市美術館であったので
行ってきたのです。

中にはその山本二三さんが描いた背景画の数々が展示されています。
背景画というのはアニメを作る1つの部分ではあるのですが
アニメ作品全体を、様々な要素からできているオーケストラ作品とすると
背景画だけを抜き出して見るというのは
オーケストラの中でフルートだけを聞くような趣というか、面白さがあります。

それだけで完結するものではないので
当然その背景画だけを見て芸術鑑賞という気分になったり感動したりということは少ないのですが
やはりそこに展開されているのはプロフェッショナルな技術の粋であって
それひとつつで完結した「作品」ではないものの、
例えば超精密に作られた機械式時計の歯車ひとつに
工芸品以上の美しさを感じたり技術の高さに感心するような感慨はありました。

今年の2月ごろに同じく高岡市美術館で行われていた「松原秀典原画展」では
なんだかおざなりな感じがあってブーブー言ってたのですが
今回は結構いい展示会で
展示の他にも氷川竜介さんの講演会があり、それにも行ってきました。
講演会は無料でしたしね。

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そんでその資料(と展覧会のチラシ)。
あのー…。

この資料というかレジュメの文字っぷりを見てもらえば分かる通り
講演会の内容がすげーガチだったんですよ!

こう、おじいちゃんおばあちゃん向けに
「山本二三って人はコレコレこういう作家で~…○○ってところがすごいんですよ~?」っていう
なんかこう、生ぬるいことを語るのかと思ってたんです勝手に!

なんでかっていうと展覧会には割と年齢層の幅広い方が訪れているようで
その、田舎の、アニメに詳しくない一般人でも楽しめるような当たり障りない内容のことを話すのかと。

…とおもいきや、違いましたね。ガチでしたね。全然ガチでした

大学の講義みたいな資料と内容。
ポツポツとしゃべる朴訥な喋り方もあって、開始5分くらいで寝そうになりました。
実際、前に座っていた人は眠ってしまって資料を取り落としてた。
頭皮をマッサージしたり掌のツボを刺激することで眠気を覚ますというテクを駆使して起きてました。

いやでもそれが悪いってわけじゃなくて。
むしろ予想以上に中身のある、中身の濃い内容の講演だったので
個人的にはすごい参考になったし興味深い内容で嬉しかった。
なので途中から眠気も去って大変面白くお話を聞くことができました。

こんな(アニメの技術に関するガチな)講演は東京でも聞けるもんじゃない。

要するに「アニメにとって背景(美術)とはどのような役割を果たすものか」という内容なんですが
「ハーモニー」とか「レイアウト」とか「イメージボード」とか専門用語もバンバン飛び交っていました。
会場の客は10:1くらいで男性客の方が多く
それもまぁ…言ってしまえばオタクっぽい人が多かったのでそれでも大丈夫なのかもしれませんが
(熱心にメモを取っていた若い男性はアニメ業界に携わる人なのかもしれない)
紛れて入場してしまったような女性やらおばあちゃんにとってはちんぷんかんぷんだったと思いますですね。

ええと、
それで上のタイトルについてなのですが
簡単に言うと「世界観を(言葉を使わず)表現するのが背景だ」ということで
甚だしくは宮崎駿監督なんかは「映画の品格や方向を決めるのが(背景)美術なんです」と言っていたり。

作品の雰囲気とか、温度とか、世界観、そういうものを決定づけるのが背景であり美術であると。
そうした、視聴者の無意識に非常に強く働きかける要素がアニメの背景というものなのに
これまではそれが顧みられることが非常に少なくて
そういった点でこういう展覧会とかで背景に注目が集まるのは大変よいということを言っていたような気がします。

あの
確かに上にもリンクを張った前回の松原さんの原画展の時の日記で
「氷川竜介さんとかに解説文をお願いしたり…」とか自分でも書いてて
今回その方が実際に講演に来られるということで驚いたのと楽しみなので行ってみたのですが…。

この人選は(俺は嬉しかったけど)普通の人にとってはハイブロウ過ぎたかもね(笑)。

質疑応答の時間もあり
「今注目しているアニメ作品は?」という質問に

「割と江ノ島の近くに住んでいて、ここ最近なんかしらんけど『青い花』、『つり球』、『TARI TARI』という
3作品で江ノ島が舞台になっていて、これは今日のアニメ背景というテーマにもつながる話だけど
実在する場所の実写を取り入れて背景を作っているが、3作品とも雰囲気が違う。
同じ場所を舞台にしてこうまで変わるのかと、見比べてみると興味深いと思います。
(富山だし)PAワークスは冒頭の、女の子が自転車で坂道を下ってキュッと止めるという
一見なんでもない、しかしアニメ的には凄く技術的に難しいシーンをこともなげにやったりして
無駄に…というと言い方が悪いですが、さりげなく難しいことをやっているので注目している」

と仰っていたのが印象的でした。

あと
「せっかく富山なので聞きますが、細田守監督、細田作品の凄いところ、特長ってどんなところでしょう?」
という質問に

「アニメの動きやそれこそ背景などの中で、非言語の方法を使って言語的なことを伝える、
絵で物語を見せていられる技術があるのがまず凄い。
そしてそれとエンターテイメント的なことを両立できている。
ハイクオリテイな映像美、高い映像技術的と観客を楽しませるエンターテイメント。
その両立が細田作品の特長であるように思います。
今敏監督の作品と近い部分があるというようにも感じますが、今敏監督は亡くなってしまいましたし
これからも期待しています。もっと若い世代からも新しい才能が出てきて欲しいですけどね」

といった答えも。

テレコを持っていったわけではないのでディテールは違うかもしれないのですが(というか違うのですが)
大まかにはこのようなことを仰っていました。

あとルパン2期の最終話(宮崎駿演出回)が、後々押井守ガメラモスラやらに
大きな影響を与えていたという話も印象に残りました。

こんなガチで深くて内容の濃い話になるならちゃんとペンとかテレコとか持っていけばよかった。
いやいや、おもしろかったです。
『ルパン』2期の最終話とか『時をかける少女』など、山本二三さんの携わった作品を改めて見てみたい。

と思いました。
マル。