明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

岐阜県高山市「うな亭」でうなぎを貪る うなぎ挽歌

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画像は岐阜県高山市にあるうなぎ屋「うな亭」。
平湯温泉の10kmほど手前(富山県側)にあります。

屋上屋を架す… というか、普通の屋根の下に飾り屋根があり
のれんのかかった入口付近は純和風の平屋建てになっています。
葉の抜けたような細い竹や木の色の抜け方
格子窓の障子(風窓ガラス)の破れ方がなんともいい「やれ方」で
池波正太郎の小説に出てきそうな風情があります。

数年前に一度訪れて、その際うなぎがえらいうまかったのでずっと訪れたかったのですが
なにしろ県境を越えなければならないのでなかなか機会がなく
ようやく訪れることが出来ました。

大沢野から1時間強だったので
富山市中心街からは1時間半くらいかな?


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こちらが頼んだ「中丼」。2,000円。
前に訪れた時より値段は高くなっている… 気がします(記憶はあやふや)。
なにしろうなぎは絶滅が危惧されるほど数が減っているといいますからね。

2,000円ですよ! どんぶり一杯2,000円!


ちまたじゃ牛丼が300円以下なんですよ!
お吸い物は「肝吸い」か「湯葉吸い」で200円。
これだけで2,200円!

そんで

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「うなぎおむすび」(300円)も頼んだから計2,500円!

すき家の牛丼(並)なら10食分、とはいわないまでも9回は食べられる額なんですよ!

ま、まあたまにしか来れないからね…。
せっかく大沢野を越えて県境を越えて神岡を超えて山を超え谷を超えして訪れた店だからね…。


一生懸命自分を説得しました。
つまりこの店をなかなか訪れられなかったのは
距離的な障壁より値段的な障壁が高かったからです。

うなぎの焼き方は関西風というか、外側はパリパリで内側はふわふわ。
ちょっとタレの甘みがカラメリゼした感のある焼き身に包まれた
目にもまぶしい純白の身は綿ぶとんのように柔らかく、噛むごとに旨味が舌の上に染みでて
歯を使わずとも舌と上顎でうなぎをつぶすと「むじゅー」とうなぎ汁がスポンジのようにあふれでてきます。

なんていうのかな
柔らかいバニラジェラートを薄いパイ皮で挟んだものをパクっと食べると
パイ皮がホロサクと崩れて甘いジェラートがあらわれ舌の上で優しく溶けていく…
というのを想像すると近い食感かも知れません。

うめえ…。

1976年の創業以来継ぎ足されているという、うなぎ屋お約束の逸話付きのタレもたっぷりとかけられていて
うまさを求めてうなぎとご飯を交互に口に運んでいると
気づけば

もうない…。


無心でうなぎをかきこんでしまいました。
友人と行ったのですが会話することも忘れて一心不乱に食べた結果
食べたという実感というか手応えを忘れてしまうほどうな丼に没入してしまっていた。

思考能力をうなぎに奪われていた。
うなぎのうまさに奪われていた。

こうなってくるともはやうなぎを食べたというよりも
俺がうなぎに食べられていたのではないかという心地すらしてくる。

ごはんの最後のひと粒をむなしく箸でつまみ取ると
あとに残されたのはどこをどう見てもがらんどうの丼だけ。
記憶すらあやぶまれる。
本当にいまうなぎを食べたのだろうか。
ただなにかうまいものを、やたらとうまいものを食べたなあという感覚だけが残っている。

さみしい… ああ… さみしい…。

食べ終わるのがなんともさみしい一杯。
食べても食べてもなくならないうな丼というのがあればいいのに。

というわけで…


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並丼(1,000円)を追加で頼んでしまった…。
おむすびも食べたのに…。

それにしてもわずかふた切れで1,000円なのだからうな丼とは恐ろしい。
牛丼なら(略)。
まあうまいからいいんですけどね。
ペロリ。

どんぶり1杯のご飯の量がそう多くないので
男性なら2杯、興が乗れば3杯くらいは食べきれちゃいそうです。

なんか数年前に訪れた時には
浜名湖から生きたまま届けられるうなぎを2週間くらい温泉の水(ぬるま湯)に活かしておいて
「温泉うなぎ」に仕立ててからさばいて焼く、というようなことになっていた気がしますが
それを今でもやっているのかはわかりません。

お店の人に聞けばよかったんですが、まぁ、ホラ、それで「もうやってませんよ」って言われたら
それはそれでショックだし…。

でもまぁ前より値段高くなってるし
むしろその分きちんとそういう付加価値をつけて売って欲しいですね。
うなぎはもうイオンとか吉野家とか大量消費で売っていい食材ではないと思います。

食べるなら丁重に扱わなければいかんです。
藤子Fの『ミノタウロスの皿』みたいに最上級の丁重さをもって厚遇しなければいけません。

身をさばく前に数週間温泉につかって療養してもらって
輸送で痩せた身を取り戻していただいて
移動のストレスを温泉で癒していただいてから蒲焼きになっていただく…
というくらいの丁重さは必要です。

うなぎはもはやただのうなぎではない。
うなぎ様である。

そんなうなぎ様をきちんともてなして処理して
数千円支払うに値する味わいに仕上げられているお店だと思うのです。

まあ、比べられるほど他のうなぎ屋を知っているわけでもないのですが。
うなぎをうなぎ様扱いする「ちゃんとしたうなぎ屋」というのであることは
間違いありません。