明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

映画『夜は短し歩けよ乙女』感想

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森見登美彦の「阿呆大学生三部作」(という呼び方があったような気がする)のうちのひとつである同名小説が原作となっている、アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』を観てきました。

http://kurokaminootome.com
公式サイトが「黒髪の乙女.com」というのは、実にいいドメイン名だ。

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映画はTOHO日本橋で観た。
夜の日本橋は人が少なくて、橋の欄干にお座りするガーゴイル銅像もいやに迫力に満ちており、摩訶不思議な威圧感を持って橋を歩く人を睥睨していた。
原作者の森見登美彦というひとは京都を舞台にした小説を多く発表していて、この人の目と作品を通した京都という町は、おそらく本物よりもかなりとても怪しく奇妙奇天烈な魅力ある土地として描かれているが、東京だってなんのなんの、歴史こそ子供が掘った砂場の穴のように浅いけれども、それなりに負けてない刹那的怪しさを垣間見せることかあるのだ。

ともかく、忘れないうちに映画の筋と感想を思いつくままに書き残しておこう。

●あらすじ

主人公の「私(cv.星野源)」は京都の大学院生である。とあるサークルに所属し、当クラブの後輩である「黒髪の乙女(cv.花澤香菜)」に恋をしている。
しかし告白したりデートに誘ったりすることは一切なく、ただただ彼女の視界に入りそれとなく関係を深めようという「ナカメ作戦」に従事していた。
ナカメ作戦とはすなわちなるべく彼女の目に止まる作戦の略であり、ひたすら外堀を埋め続ける日々であった。

彼女と私はそして京都のとある夜、三階建ての叡山電車李白と名乗る謎の老人と飲み比べをしたり、はたまた学園祭でゲリラ演劇に参画したり古本市ですれ違ったり風邪を引いたりと、一晩であたかもいくつもの季節が巡ったような、不思議な夜を過ごすのだった。


●感想

同じく森見登美彦原作のテレビアニメ『四畳半神話大系』の監督の作品だったので見に行きましたが、個人的には『四畳半~』よりもうひとつ楽しめなかった感じです。

その理由をいくつか挙げてみます。

星野源の声は主人公のキャラクターに合っているけど、いかんせん声優が本職ではないので、『四畳半~』のときのように早口で原作の地の文を読み上げるようなシーンが見ていてややツラい。『四畳半~』の場合はこれが何より魅力だった面もあるので、残念。

原作からの改変で、よりファンタジーな、というか、現実から乖離した現実離れした「アニメ」になってしまって、感情移入を阻害した。湯浅監督の持ち味であるユニークな画面づくりは健在だけど、それに頼りすぎた感がある。あくまで現実の京都で現実の大学生たちが現実離れした事件に巻き込まれるというところに本作のダイナミズムやムニャムニャとしてオモチロイところがあると思うので、現実という土台はあくまで徹底的に現実として描くべきではなかったろうか。そこまで想像の産物として描いてしまったら、すべてがフィクションの絵空事のように感じてしまう。

前半が退屈(後半はおもしろくなります)。

詭弁踊りがかわいくない。

画面の情報量がテレビ的。映画のスクリーンで見るからにはもっとコテコテに書き込んでも良かったとおもう。

古本市の神様が小津の顔。なんかもっとふつうにかわいい美少年でよかったのではないか。

……などが、まず感じたあまり楽しくなかった点でした。
くさすばかりなのも良くないと思うので、良かった点も挙げましょう。
後半はおもしろいです。クライマックスのクライマックス感はある。
「そこにお酒のある限り!」というセリフ。
(原作でもそうですが)『四畳半~』に出てくるキャラクターも多数登場して嬉しい。
面白くなくはない、面白くなくはないのですが!
なんかこう、もう一声! という感じでしたね…。


黒髪の乙女が惜しかったのかな~。
原作小説の「こんな文系男子が思い描くような理想的な女いねーよ! ……でも好き。超かわいい。好き」感に乏しいのが残念至極。

もう一回原作読もうかな。