明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

フランツ・カフカ『変身』

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 ある朝、グレゴール・ザムザが何か気がかりな夢から目を覚ますと、寝床の中で自分が一匹の巨大な
 虫に変わっている事に気づいた。


というなんとも困ってしまう状況から始まる有名な小説。
世界はメタファーだよ田村カフカ君、のカフカ君が偽名で使ったカフカ
ちなみに本物のカフカチェコスロバキア人。

無茶な偽名の作り方もあったもんだと思う。


 ☆あらすじ☆

ある朝目が覚めてみると、なぜだかはわからないけれども、
セールスマンのグレゴール・ザムザはおおきな虫になってしまっていたのだった。
困った。
これではベッドから這い出るのも一苦労だ。
ベッドには段差があるし、人間ならよっこらせと降りるようなその段差も、残念ながら今、
彼は虫なので、足はあるけど非常に短い無数の足が体から直接生えているような状態で、
つまりベッドからよっこらせと下りることは不可能なので、どっすんこと落ちるしかない。
困った。
これでは仕事にいけない。
虫だし。
仕事をクビになってしまう。家族――年老いた父、母、妹――は、自分ひとりが全て養っているのに。
案の定クビになった。
というか上司も両親も、この姿を見たら声を上げて逃げてしまった。
まあひどいとも思わない。
気持ちはわかる。
なんたって虫だし。
気持ちはわかるがさて一体これからどうなってしまうんだろうか。

両親も妹も外で働き出した。仕方ないと思う。
だって自分は虫だから。
母は部屋に寄り付かなくなった。人間ほど大きさのある、気味悪い虫を見たくないのだろう。
元々気の弱い母だ。逆に気の強い父は、すきあらば自分を追い出そうとするようだ。
妹だけが自分の世話をしてくれる。優しい妹だ。
こんなことにならなければ、自分の稼ぎで妹が行きたがっていた音楽学校に通わせる計画を、
クリスマスの夜に話す予定だったのに。
それはかなわなくなってしまった。
だって自分は虫だから。

父がりんごを投げつけてきた。背中にめり込んだ。痛い。
それが腐ってきた。痛い。でもいつの間にかあんまり気にならなくなった。
食欲も無い。

家族は、少しでも家計の足しにするために、家に3人の紳士を下宿させた。
紳士達から、家族はまるで使用人の扱いを受けている。
自分のせいだ。
そして、家賃収入のために、自分は紳士たちに姿を見せてはならない、が。
ある夜、妹がバイオリンを弾き始めた。
紳士達の気には入らなかったようだが、美しい音色だった。
余りに美しい音色に、吸い寄せられるように近づいていってしまった。
妹だ。
自分をこの世界で唯一許容してくれたのは、父でも母でも上司でもない、妹だけだった。

紳士たちに見られてしまった。
紳士たちは驚いて、家を出て行くと宣言した。
両親はうろたえ、妹は深く落ち込んだ。
全員が全員、疲れきっているようだった。

長いため息の後に、妹が言った。
「放り出しちゃうのよ」
この得体の知れない虫を、兄さんだと信じて、周りから隠しながら世話を続けていたのが私達家族の不幸の原因よ、
と、妹がそう言った。
虫の姿をしたザムザを、世界で唯一許容していたはずの妹がそう言ったのだった。

深い絶望と悲しみをもってザムザは死んだ。

それを見つけたのは家族ではなく女中で、その死を知った家族は、
長い間の悩み事がようやくなくなってくれたのだと喜んで、ザムザの死骸に目もくれないで、
その日、久しぶりの外出を楽しんだ。




とかそういうお話(ざっっくり)






 ☆感想☆

主人公・ザムザに共感を覚える。
というのは珍しいだろうか。

共感ポイント

 ・寝床から出られない
 ・人間はたっぷりと眠らなければならないのだ(7pザムザのセリフ)
 ・自分が駄目(虫)になってしまった理由はわからないけど、それに抗えない。抗わない。

特に3つ目。
字面どおりにこの『変身』を読めば、パニック映画のストーリーにもなるような設定だけども
(人間が虫になる……ハエ男みたいな?)、どうもそういう感じじゃない。

それよりもむしろ、勤勉で責任感の強い青年が、特に何のきっかけも持たずに、
それまでの生活を送れなくなってしまうという、
精神の病気にかかってしまった青年の話のような、そういった感じ。

そう!主人公がヒキコモリになる話なんだわこれって。
いままで家族と自分のためにしゃかりきに働いてきたザムザが、
特にきっかけはないけど会社を無断欠勤しちゃってそのまま転がる石のように堕落して
NEETかつヒキコモリになってしまうという…風に書くとまるで現代日本のために書かれたみたいやね。

NEET、ヒッキー、ネクラ、口下手、妹萌え……
5翻でマンガン確定、裏ドラ乗ってハネ満だぁ。
子のハネ満は1万2千ね。

つまり昔のチェコスロバキア人が書いた『NHKへようこそ!』ってことです。
(←現代日本のヒキコモリが主人公の話/作者もリアルヒキコモリだったとかどうとか)

カフカがザムザみたいにひきこもったのかどうか知らないけど、
ザムザにはカフカ自身が色濃く投影されているらしい。
解説によれば。
父親との関係も複雑なものがあったとか。
父親に投げられたりんごが自分の背中にめり込んで、
それが腐食して炎症を起こすだなんて、なんだかいろんなものを暗喩してるみたーい。

上に書いたあらすじだけをみれば救いの無い話のようだけれど、
主人公ザムザが割とあっさりと自分が虫であることを受け入れるので、
なんか読んでもそんなに落ち込まない。
ザムザは基本的に流されるがまま。

そんでまあ、話の大部分が「ザムザ虫が部屋に引きこもって家族の凋落を見る話」に使われるんだけど、その「でも仕方ない、だって俺、虫だもの」っていうある種、無責任で
ある意味自分にとってもものすごい気分の重くなる諦めの心理、
っていうのが現代ヒキコモリ心理とそんなに離れてない…
…ヒキコモリじゃなくてもなんかそういうときはあるよね。

あれもしなきゃならんくて、これもしなきゃならんくて、
それだってしたほうがイイに決まってることなんて数え切れないほどたっくさんあるんだけれども、
なあーーーーーーーんかとにかくやる気が出なくて、なんも出来ん。
ぴくりとも動けん。
自己嫌悪に陥ることすらめんどくさい。
これはもうなんか理屈じゃなくてほとんど病気じゃないのか自分。
というふうにまあ、虫に変身する時が、よくある。

たぶん俺だけじゃなくて、どの世界のどの時代にもそんなような人が一定数いるからこそ
この作品は読まれ続けているんじゃないだろうか。

と無理矢理まとめてみようとしてもグダグダ感は拭いきれない。
どうしたもんか。


この小説は、他の作品で描かれることの少ないような、人間の駄目な方の本質を捉えている。
ってことかね?
駄目な方の本質を描くより、いいほうの本質を描くほうが作品として爽快感のあるものに仕上がるだろうし、
そっちの方が書いてても読んでても気分イイだろうしねえ……。
駄目な方の本質を描くにしても、破壊とか身勝手とか、
他人を傷つけるような人間の駄目さを描く作品はよくあるけれども。
そっちの方が派手だし絵になるもんね。話として面白くなるから。

だけど「怠惰」を人間の本質と捉えて、作品にするのは……少ないよね。

そして今気づいたけど「怠惰」っていわゆる「大罪」のうちの一つだねー。
あはー。出来すぎかこりゃー?
宗教的には「怠惰」は人間の性質の中でも克服すべきもので、
それが克服し難いからこそ「大罪」と名がつけられているわけだー。
そんでもってその大罪に抗えない哀れな青年の姿を描いた作品ってわけだこの『変身』は。

おっ、ちょっとまとまりかけてない?
……てないですかそうですか。

その「怠惰」を特に否定的に書いてるわけじゃないのが(もちろん肯定的でもないけど)、
この小説の特徴で、おもしろいところなのかも。
普通なら、自分の意思と関係なく虫になって働くことも出来なくなってしまったザムザが、
家族がやつれていく姿を見て
「どうして俺はこうなんだ、虫でなければ俺がいくらでも働くのに」
って懊悩する姿を書きたがると思うし、そっちの方が人間として前向きやん。
でもそれじゃきっとありきたりになって、
「怠惰」という人間の本質をうまく描ききれないんでしょうねきっとたぶん(←投げやり

いやでも
「怠惰は自分どころか、親しい他人すらを傷つける」という風に読むこともできる……かなー?

いやね、わかってはいるんですよ。
頭では。
課題をしなきゃならんし、就活始まるからそれに備えてやるべきことはたくさんあるし、別にそんなことが無くったって自分の将来ためにやらないといけないことや考えないといけないことなんて他人に言われるまでも無くたっくさんあることは知ってるんですよ。
わかった上でも出来ないんですよ何も。
その、なーんにもできない感にとらわれてしまっているのがザムザで、『変身』で、「人間が虫になってしまってああ恐ろしい」という類の話ではないんですよ。
ということですよ。
この小説のためにさし絵が描かれるときに、
作者も「虫をそのまま書くなよ」と懸念したそうですし。
作者は虫を描いたんじゃなくて、虫のような状態の人間の姿とその心理を描いたんだもんね。


まあいつも通りまとまらずに終わるわ。



☆他の他愛ない感想☆

これを読んだ理由は、新潮文庫の青い三角が欲しかったから。
「虫」と表現されるザムザ、想像の中ではモスラの幼虫にしてた。
なんか解説では「ムカデのような感じ」って書かれてて、解説を先に読んでたらとても気持ち悪くて読んでられなかったと思う。
「虫」と一口に言ってもそりゃいろんなタイプがあるわけで……。
ザムザをどの虫で想像するかによって、ザムザの印象は大きく変わるかもね。
上に書いてあるムカデは無理だね、序盤で読むのやめるね多分。他には……

ゲジ→無理。カメムシ→臭い。カブトムシ→かっこいい。ぷりんちゃん→殺せそんなもん。
王蟲→大気が怒りに満ちている……。サナダムシ→2メートル。カマキリ→蟷螂拳


モスラの幼虫は大きさの割に愛らしくてイイね……(´・ω・`)
ぷりんちゃんがわからない方は6/22の日記を参照のこと。

いわゆるアレですよ、アレ。