明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

『孤高の人』(新田次郎/新潮文庫)感想ー

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というわけで画像は『孤高の人』。
新潮文庫で上下巻がでています。

昨年人気を読んだ映画『剱岳 点の記』の原作者・新田次郎による、
有名な山岳小説です。
この小説を原案とした漫画『孤高の人』が、
週刊ヤングジャンプで連載中。

その漫画の帯が付いた新装版もあったんですが、
なぜか少し高くなっていたので、
安い方の旧装版を買いました。

面白かったですよ。
驚いたのがこの主人公・加藤文太郎が何と実在の人物だったらしいということ。
へぇー。

加藤文太郎 - ウィキペディア
http://swiki.jp/w/yfr05mjsl3s6ahol

山のように厳しくて山のように美しい人生を送った加藤文太郎
孤高、というのがとてもしっくりくる主人公です。
寡黙で情熱的、頑固で一途な山男。

大いなる目的のために毎日3kgの石を担いで歩いて出社したり、下宿の庭で野宿したり、
冬山登山をするために日常的にそうやって鍛えているというのは、
実に合理的だけど、常軌を逸している。
常軌を逸していると見られても気にしない意志の強さがある。
目的のための努力であるから、他人の目が気になるなどという、余計なことは考えないのだ。
かっけえ。

まぁこの小説はこの主人公のそういうかっこよさによって成り立っている小説で。
それまで金をかけて徒党を組んで登るものだった登山界に、
「単独行の加藤文太郎」として名乗りを上げていくさまは痛快だし、
自らの体験を生かして防寒帽を2重にかぶったり、
登山時にはポケットに携帯食を満載していたり、冬の雪山でも凍えない眠り方を開発したりして、
創意工夫をして自らの力だけで雪山登山という困難に挑んでいく過程は、
ただの小説の登場人物以上に、なにか見習いた気持ちになる。

あとちょっと面白かったのが、
昭和初期の人の恋愛てのはなかなかすごくて、
お茶を出したり汗を拭いたりただ二人でいるだけで、
結婚の意思があるほどその人が好きだと言う意思表示になってしまうとかね。
小学生か。

そのくせ影村課長は未婚の娘を食べちゃうし。
園子は男にホイホイついていって酒飲んでヤラれちゃうし。
宮村はその子に誘惑されて恋の海に溺れていくし。
そんで振られて鬱鬱になるし。
宮村…他人に迷惑をかけるな!

以前読んだ新田次郎の『八甲田山 死の行軍』は、
部隊が大体全滅しちゃう救いのない小説だったので、
この『孤高の人』では、
立山を冬季に富山県側から長野県側に縦走するとか、
冬の富士山を登頂するとか、
名誉にあふれるというか、
明るく面白い部分もあるのでよい。

結婚して子供生まれたらデレッデレのマイホームパパになる加藤文太郎とかね。笑。

娘っさん よく聞きな 山男には惚れるなよ…♪ 
という歌が作られたころの山男像を描いた作品なのでしょうか。

最近の山男なら「まぁ登山が趣味だなんてスポーツマンでステキ! 抱いて!」くらいに思われるはずです。
きっと。

孤高を保つ主人公の潔い生きざまに、
憧れます。
そんな小説でした。

引っ越しまで残り少ないんですが準備が進まねえ。