明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

重松清『赤ヘル1975』が面白かった!

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画像は昨年出版されていた重松清の小説『赤ヘル1975』表紙。
読んだらこれがとてもおもしろかったので
書いておきます。


< あらすじ >


主人公・マナブは怪しいビジネスに凝る父親に連れられ東京から広島に引っ越してきた小学生。
酒屋の息子で野球少年のヤス、スポーツ新聞記者になりたいユキオと仲良くなる。
しかし父親はマルチまがいのビジネスをヤスの母親や近所の人に勧めてしまう。

一方、去年まで3年連続最下位の地元球団広島カープは新外国人監督の意見もあり
この年からチームカラーを青から燃えるような赤色に変更。
(ヤスからは「女色じゃ!」と嫌がられながらも)
赤ヘル軍団」と化したチームは例年にない快進撃をひた走り――!?



< 感想 >

面白かった! 泣いた泣いた!

こんなに泣かされた本は浅田次郎壬生義士伝』以来。
それを読んだ時の感想を見ると、8年ぶり?

少年3人組の友情物語を軸に
混戦セリーグの台風の目となった広島カープの活躍を描いていき
カープを純粋に応援するヤスやユキオ、そして広島の人々のひたむきなすがたに…
感涙。

< 君たちは君たち自身に、野球に、そして地域社会に対して責任がある。君たちの可能性に富んだ毎日に向かって頑張ってほしい。ベストをつくせ。カープのファンは素晴らしい。彼らにいい試合を見せねばならない。ファイトこそ勝利への基本である。勝つことが全てではない。しかし勝たねばならない >

という、開幕15試合で更迭されたルーツ監督の言葉や
広島カープにまつわる様々な逸話がひとつひとつイキイキとその当時の
カープカープファンを活写して、胸が熱くなりますよ…。

(ヤクルトもちょくちょく出てきてちょっとうれしい)

「ほいでも、気ぃつけや、広島の街を巨人の帽子かぶって歩くいうんは、クソを垂れ垂れ、チンポを振り回して歩くんと同じことなんで。ぶちくそ恥ずかしかろう。ほんまなんど、気ぃつけんと、大恥かいてしもうてからじゃ、遅いんじゃけえ」

広島ファンのこの巨人に対する敵愾心とかね!
プロ野球ファンならにやりとしてしまうような心情描写がニクイですね。

少年たちと、広島カープ

その2つを軸にしながら、1975年という、1945年の終戦時から30年という時間の広島
原爆や空襲の傷跡は確かに残り、しかし、街は活気に溢れ
平和公園には多くの観光客が訪れている。

「平和都市」という名のもとに
他の都市では見られないような「平和教育」や「集会」があり
特に8月には街全体が一種異様な雰囲気に包まれる――。

という、「原爆」、「被曝」についても
直接は原爆を体験していない主人公たちの目を通して
生々しく描かれています。

それがとてもいい。

親会社を持たない市民球団である広島カープ
誕生のそのときから復興と市民を元気づけることを目的として結成され
広島市民も、「樽募金」に代表される熱い気持ちで、カープ愛で応えた。

原爆、荒廃した街、立ち上がる広島、広島市民、戦後復興――

これらは全て不可分で
そういったものを全てひっくるめて「広島カープ」なので
やはりそれを描かずにカープの物語を綴ることはできない。

それらをきちんと描いているから、エライと思うのです。


『広島カープ誕生物語』(中沢啓治)に描かれてるような
広島市民とカープの熱い関係がみっちり描かれつつ中学生の友情物語が軸になりつつ
原爆と戦争の影をきっちり織り込みつつ(これはカープの物語に不可欠の要素でもあり)
広島ファンはこれを聖書にできると思うくらい、いい本です。

やっぱり野球ファンがそのチームを応援するっていうのは
単に好きだからというだけではなくて(最初はそれで全然いいんですが)
そのチームの歩んできた歴史・ヒストリー・ドラマというのに惹かれて
強烈に肩入れしたい! という思いでやっている人が多いと想像されます。
(我が身を振り返り)

その点で広島カープほど濃密なヒストリーを持っている球団は他になく
そのヒストリーというのを追体験できるとてもいい小説だと思いました。

プロ野球ファンなら! ぜひ! 断然オススメですよ!

ましてカープファンなら! オススメどころじゃなくて、もう必読書ですよこれは!


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広島カープ誕生物語と合わせて!

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BGMは

これで!



プロ野球ファンでなくても! 重松清ですから! 直木賞作家の面目躍如!

って感じの一作です。
まだ3月ですが、これは今年のマイ・ベストブックになりますよ!おそらく!



ちなみにヤクルトはこの3年後の1978年に初優勝。
優勝決定の瞬間は、広島と同じくファンがスタンドからグラウンドになだれ込んでいます。
今ではとてもこんなことできないので、少しうらやましいぜ。 ↓