親知らずを抜いたりしていました
富士そばでうどんを食べるというのは、富士そばというそばに懸ける思いを示した店名を侮辱してはいないだろうか。
考えてみれば上京してこの方、どうにも醤油色で濃い色のだしが、乙女の柔肌のように白くて柔らかいうどんにはそぐわないようなきがして、富士そばでうどんを注文したことはなかった。
それでもこの日、その禁をついに破ったのは、親知らずを数時間前に抜歯していて、口の中に穴が空いていたからだ。
初めて食べる富士そばのうどんはおもったよりも悪くない。奥歯を失って頼りない口内にもやさしく、ほっとするような味わいで、濃いめのカツオ出汁も、いいじゃん。
「しかし、富士【そば】で【うどん】はなぁ…」
「こだわるね、君はヨドバシカメラでカメラを買ったことはあるのかい」
それもそうだ。