富山県西部のぞうに
雑煮というのは不思議な食べ物だなあ。
「お正月には雑煮を食べる」とみんな言うけれど、その中身は全然違う。
うちのほうでは上の写真の通り、ネギと餅以外は入らないけど、関東では鶏肉が入るのが一般的だそうな。
さらに東北の方へ行くと大根や人参といったものも入るらしく、味付けもかなり異なるらしい。
雑煮がお店で売っているようなものではなくて家でしか食べないものだから、味の伝播が起こりづらく、それぞれの地域で独自の生態系を保っていられるのだろう。
ともかく、餅とネギと出汁のみで構成された、どこまでも本質的でスパルタンなこの構成は、やはり砺波平野の農家の雑煮であるというところに根ざしているというのは間違いなく、せっかくの雑煮をごちゃごちゃと野菜や肉で味を濁したくないのだという強い意志を感じる。
コメとその結晶体である餅に対する強い愛情、敬意にも似た感情が込められているのだろう。
この雑煮で育ってしまうと、鶏肉なんて入れるのはやはり雑味であり正月からそういった肉食をするというのは、不浄であるようにすら感じられる。
とはいえ、おせちやその他正月料理には肉でもなんでもあるので不浄もクソもないのだけど、それでもやっぱりこの餅とネギだけの雑煮は、なにか正月の化身でもあるような感じがして、そこに余計なものを入れたくない。
俗なものではないのだ。
この一杯に、コメの豊穣と、正月の清々しさが込められている。つまりそういう雑煮なのですね。