明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

『高橋是清自伝』(中公新書/高橋是清 上塚 司・編)

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卒論『日露戦時の日英関係』
のために歴史的な本を読んだり読まなかったり。

前にもチラッと書いたけど、
この『高橋是清自伝』、普通に面白い。

なにがおもしろいって、
まず人生波乱万丈すぎる。

高橋の転職人生について書いた下巻の後書きをそのまま引用すると
≪最初は十二歳のとき、「バンキング・コーポレーション・オブ・インデヤ・アンド・チャイナ」支配人
シャンドのボーイとなった。このとき馬丁やコックたちと一緒に酒を飲むことをおぼえる。
さかなはネズミである。翌年、仙台藩からアメリカ留学を命ぜられたが、自分の旅費だけでなく、
同行した友人の旅費まで船中のウイスキーに化けてしまう。米国では奴隷にされる≫
 
この時点でいろんなツッコミどころがあるんだけども、
年齢的にもまだ12歳とかそこらであり、
これからどんどんいろんな出来事が起こってくる。

しかしそれがね長い。
以下ダイジェストで。

・帰国後、初代文部大臣森有礼の玄関番になり、翌年大学南校(東大の母体)へ入学、教官手伝に任命(15歳)
・芸者遊びに熱中。女の長じゅばんを着て酒を飲んでるところを見られて辞職
・芸者のヒモになる
・「こんなことではいかん」と一念発起し、東京英語学校教師に(21歳)
・文部省御用係、農商務省工務局(28歳)
・商標登録所所長(30歳)、特許の法律作りに尽力する
・専売特許局所長を兼務(31歳)
・特許局長、東京農林学校長兼務(35歳)
・ペルー銀山経営の計画に参加。大失敗して資産を失う。
・友人たちが再就職を勧めるが「衣食のために官途にはつかない、食うために役人になっては、上官の言うことが間違っていても従わなければならないから」
・第三代日銀総裁川田小一郎から山陽鉄道の社長に推薦されるが「自分は実業のことは知らない、やるなら丁稚奉公からさせてもらいたい」と拒否
・新築中の日銀建築事務所で事務主任となり、やがて正社員採用
・日銀馬関支店長に
・正金銀行副頭取
・日銀副総裁に
・このあたりで日露戦勃発。外債募集のために英米欧州を回る。




ああもう…長いったら。
このあたりまでが『高橋是清自伝』に載ってる内容なんだけども、
実際はこの後さらに男爵になったり子爵になったり、
それを辞退して代議士になったり日銀総裁になったり大蔵大臣になったり、
大蔵大臣兼任の総理大臣になったり金輸出再禁止したり、
最終的には軍部に金を出さなかったものだから軍人に暗殺されたりする(二・二六事件)。

詳しく・・・もないんだけど、簡単に知りたいならこちら

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E6%98%AF%E6%B8%85
ウィキペディア高橋是清」)


それにしても軍人め……この人がおらんかったら日露戦がどうなるかわかんなかった、
日露戦「奇跡の」勝利の立役者を簡単に射殺してしまうとは……
まったく自家撞着と言うか自己矛盾と言うか、
「国のため」と言いながらやってることは自分(軍部)のためであるという……腹立たしさが。

シビリアンコントロールを失うと、もうひどいことになるという教訓ですね。
理屈より感情が優先されるという状況に。

どうして文民統制が崩れてしまったかと言えば、
軍部大臣現役武官制(陸軍・海軍大臣を現役武官が行う)という制度があったり(一時廃止されたり復活したり)、
議会が軍予算を抑えることで軍部を抑えたりしてたんだだけども、
こういうテロリズム・独断専行・下克上の雰囲気が軍部に蔓延したり、
政党政治というシステムも腐敗する時期がやってきて国民に政治に対して失望、倦んだ空気が生まれたり、
色々な状況が複合的に訪れたりしてたんであって、
それをここで詳しく述べるのは今回の趣旨から外れるからしない。



高橋是清は漫画『日露戦争物語』にも大学予備門の英語教師としてチラッと登場するけれども、
本当に秋山真之南方熊楠あたりに英語を教えていたかどうかはまぁわからん。


波瀾万丈人生の波瀾で万丈な感じがよく書かれている上巻の方が読み物としては面白い。
でも卒論に役立たない(笑)。

それでも上巻にも、
日露戦時に日本のスポークスマンというか、
有利な国際世論を醸成するために英国に派遣されてた末松謙澄(ちなみに米国には金子堅太郎を派遣)
と英字新聞を翻訳して日本の新聞社に売り込みに行ったり、
英語を教える代わりに漢文を教わったりする仲良しさんなくだりなんかもあって、
手元には『ポーツマスへの道 黄禍論とヨーロッパの末松謙澄』という文献があったりして、
具体的に役に立たなくとも、
やはり同時代のことを調べるとなにかと重なってくる部分が出てくるものなんだなぁと思った。

そしてその重なったりするところを集めていって、
新たな視点・論点で主張をするのが卒論というものの大きなテーマであって。


下巻は外国債の募集についてかなり詳しく書かれていて、
こっちはもうすごく役に立つというかこのまま卒論に引用できるというか、
むしろ日露戦時の外債研究の下敷きとなるべき非常に基礎的で良い史料だと思われる。



しかし……同時期の文献に比べれば俄然読みやすいとはいえ……
現代の文献に比べれば非常に読みづらいわけで……。

8月はあと10日と1日しかないのにこの上下巻しか本が読めてないアッハハハハハハ。
いや他にも色々読んだりはしてるんだけど、
それは一部をつまみ食いしてるだけであって全部通して読んでるわけではないので……

年間読書120冊計画は今年も順調に遅れを見せております。
なんとか! 遅れを取り戻したい。早いうちに。

しかし卒論の作業をしなければ……。







…………しなければあッッ!!








あ、画像はその『高橋是清自伝』(中公文庫)の上下巻。
合わせて買っても1,460円という、史料になりうる文献にしては破格の値段!

ありがとう中公文庫ー。
おかげで下巻を2冊も買ってしまった(笑。