明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

『ミニ・ストーリー ―小型車の革命』(ローレンス・ホメロイ 著/小林彰太郎 訳 二玄社)感想

イメージ 1
という本を読みました。

今乗っている、
「ミニ」(旧ミニ)という車の開発経緯というか開発秘話がまとめられた本で、
BMC社会長サー・レオナード・ロードが、
技術者であるアレック・イシゴニスに新しい小型車の設計を特命し、
それが完成するまでがまとめられています。

ひとことで言うと「プロジェクトX ~小型車に革命を起こせ~」という感じです。
どっ どっ どっ どっ どっ  風の中のす~ばる~♪ (懐かしい…

文章に専門用語がバシバシ出てくるのが辛いんですが、
当時の写真や開発者イシゴニスの直筆スケッチなど図版も多くてなかなか面白かったです。
http://blog-imgs-37-origin.fc2.com/k/a/t/katadatomohiro/100420s.jpg
こんなん(クリックで大きくなります)。
あ、右下のはイシゴニスのスケッチで、
本文はもちろん日本語で書かれていますよ。

昔(半世紀くらい前)にイギリスで開発されたこの「ミニ」という車は、
00年に販売権がBMWに移るまで、基本設計はほとんど変わらなかったという車で、
つまり最初の開発秘話は自分がまさに今のっている車の開発秘話でもあるので、
親近感というか現実感を持って興味深く読み進めることができました。

図版についてはこちらに目次の写真が↓
<古本野郎R>
http://katofuruhonn.blogzine.jp/furuhonn/cat4579350/index.html

●感想
>モーリスの方は、同社のロングセラーであるマイナーに結び付けて、“ミニマイナー”と名付けられた。
>20年の歳月の後では、(中略)“ミニ”は新しい英語の慣用語となり、
>フラッシュバルブから消防自動車に及ぶあらゆる小さいものの形容詞として親しまれることとなったのである。
(本誌p73より)

「ミニ」という英単語がこの車の「ミニ」から広まったというのは、
驚くべきことです。

この車がなければ、
「ミニスカート」も「パジェロミニ」も「ミニストップ」もなかった
(かもしれない)というわけです。
すごい。

じゃあその「ミニ」はなんで「ミニ」と名付けられたか……と考えれば、
「ミニチュア」とか「ミニマム」とかの単語があったからかしら?

どうなんだろう、「ミニマム」、「ミニチュア」はあっても、
「ミニ」という単語はなかったのかな?

あと「パジェロ・ミニ」ってなんか、商標とか大丈夫なんかな。
ミニスカートはともかくパジェロはもろ車だし。
まぁいいか。

ええと、
この「ミニ」という車が生まれた経緯をざっと説明しますと、
1956年に「スエズ危機」というスエズ運河国有化事件がおきまして、
細かい話ははしょるとして、ガソリンが戦時のように配給制になったりして、
「低燃費で高性能」な車が社会的に望まれる状況となったわけです。

そしてその開発の要請からわずか2年半後の1959年、
「モーリス・ミニ・マイナー」、「オースチン・セヴン」が発売されました。

なんだか「プリウス」をはじめとしたハイブリッド車に似た開発経緯でもありますね。

そして「ミニ」の代名詞ともいえる「ミニ・クーパー」が颯爽と登場したのは1961年。
ジョン・クーパーさんという人との共同開発によって生まれました。
この、ロンドンにほど近いサービトンで工場を営んでいたジョン・クーパーとイシゴニスとの出会いが、
その後の「ミニ」の運命を一変させることとなるのでした(プロジェクトエエックス!)…。

ええと、
「ミニ・クーパー」という単語について少しだけ説明しておきますと、
レース用モデルが「クーパー」と呼ばれ、
普通の「ミニ」より馬力が強かったり加速が良かったり値段が高かったりするのです。
要は今でいう「タイプR」とか「RS」というものに近いですね。

そしてその「ミニ・クーパー」、
1961年に登場するや否や、ありとあらゆるレースで好成績を収めます。

>ミニ・クーパーの到来は、ミニのコンペティション界における地位を一変させた。
>62年度に、ミニ・クーパーは地球上あらゆる場所のあらゆる種類のモータースポーツ
153回の勝利を獲得した。
(本誌p133より)

153回とかすごい。
今でも「ミニ」といえば、
ミニクーパー」というグレード名が固有名詞のようになっている(実際に携帯電話の予測変換にもある)のは、
この頃の印象がかなり強いからなのでしょう。きっと。

実際、世界最古のラリー「モンテカルロラリー」では、
ポルシェやベンツなど並いる強豪を抑え、
「クーパーS(クーパーの改良型)」が1964年、65年、66年と3度も制覇!
(64年は表彰台を独占しながら、ライトが下向きにならないという違反(言いがかり?笑)で失格に)

※ちなみにこの「モンテカルロラリー」、
90年代にはトミ・マキネンというドライバーが日産のランサーエボリューションVIという車で3連覇してたりします。

つまり現代(…より一昔前かなぁ)の若者たちが、
ランエボかっこいい!」
と向けるような熱い羨望のまなざしを40年前には、
「クーパーかっこいい! 超カッコイイ!」
このミニクーパーが受けていたというわけです。たぶん。

本の中にはラリーの写真もチラホラでてくるんですが、
ラリーはやっぱりかっこいいですね!

モンテカルロラリーについては、
新ミニのHPに詳しいサイト(動画や写真アリ)があったので、
リンクを貼っておきます。
http://www.mini.jp/planet_mini/monte_carlo/top.html

内容の話。
内容の大部分が
「ミニは同時代の車に比べ、いかに革新的で高性能であったか」
ということを説明する内容になっているので、
そのために多くの専門用語、技術用語が駆使されていて、
一般人には理解不能な部分も多いです。
(「前輪独立懸架」とか、「伝達損失」とか「べベルギア」とかの用語が躊躇なくでてきます)

それに、当時の車に比べて高性能であることをアピールされても、
今読む分には、そんなに意味がない…というか、
69年の初版発行当時の読者が読んで感銘を受けるようにはいきません。

でもって、
この本が出たあとにも、
マーク2が出たりマーク3が出たり、
ミニの製造権は売却されたりややこしくなるんだけど、
そのややこしいあたりがのっていません。
載ってるのはほんとに初期の話だからね。

結局、この本でわかるのは、
「ミニ(モーリスミニ)」、「ミニ・エステート」、「ミニクーパー」、「クーパーS」、他、
初期に生産された車種の誕生秘話ということになります。


しかしこの「ミニ」シリーズは、
それこそ2000年にBMWが製造権を得るまで同じ基本設計で長い間生産される訳で、
であるからこそ現代に繋がる歴史として楽しめるわけですが、
これ一冊で「ミニ・ストーリー」が完結するわけではないので、
そこは(仕方がないとはいえ)、正直、物足りない部分ではあります。

むしろこの後の権利と生産の移り変わりこそドラマチックなような気もしますしね。
個人的には(自分が乗ってる)「メイフェア」というグレードはいつどういう意図でできたのか、
とか知りたかったです。

あとは、「いかにして日本市場に受け入れられたかや」、
「社会や他の車にどう影響したのか」、というようなところも興味を引くところで、知りたいことですね。
(例えばそれこそ「パジェロ・ミニ」との関係とか、映画「ミニミニ大作戦」の話とか)。

タイトルは「ミニ・クーパー誕生秘話」とした方が、
内容に即している気がします。

でもって上記二もリンクを貼った新ミニのサイトに、
この本の訳者で初代『カーグラフィックマガジン』編集長の小林さんの手による、
日本経済新聞人掲載された広告のPDFがあったのが、
この本の要約みたいなものだったのでそちらもリンクしておきます。
http://www.mini.jp/planet_mini/monte_carlo/report.pdf

↑読みやすいですし、
本には無いイシゴニスさんへインタビューした時の話などもあり、
面白いですよ。

ぶっちゃけこれを読めばこの本は読まなくてもいいかも…


以上、
本の感想でした。


まぁ、
(旧)ミニという車は設計も古いですし現代の最新の車に比べて色々と不便なところもあるんですが、
こういった半世紀近い歴史を持った車で、
その車に乗るということはつまりそのままその歴史に乗るということでもあります。

英語で言えばhistory.
実用だけではない魅力があるわけです
(そりゃあ実用だけで車を選ぶなら同じ価格の軽自動車にでも乗りますよ)。
歴史に乗る、ヒストリーに乗ることができるというのがミニの魅力の一つだと思っています。

などとロマンチックなことを言ってしまいましたが、
なにしろ文学部史学科卒ですからね。
浪漫主義者と呼んでくれてもいい。

というわけで、
街中でミニを見かけたら、
世界のラリーを駆ける往年の雄姿を想像してみてくださいね。