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日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

西住まほ推薦ラノベ『機甲狩竜(パンツァーヤクト)のファンタジア』(内田弘樹/富士見ファンタジア文庫)感想

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写真は富士見ファンタジア文庫『機甲狩竜のファンタジア』(作・内田弘樹)。
「西住まほ、愛読!」という、ガルパンおじさん一本釣りな帯がついていたので読みました。
せっかく読んだのでかんたんに感想などをまとめておきます。
2016年9月17日発売だったみたい。割と新しいね。

●あらすじ

竜と、それを狩る「狩竜師」がいる世界。
剣と魔法を駆使して竜を狩るのがスタンダードな世界で、主人公のトウヤは、祖父から受け継いだ戦車(V号戦車パンター)を使って狩竜師になろうと、狩竜師学校に入学する。
しかし入れたのは一番ランクの低いD組で、近いうちに何らかの成果を挙げなければ退学になってしまう。
そこでトウヤは、出自はエリートの狩竜師ながら動物や竜が苦手なシェルツェやおさななじみのヨシノ、引っ込み思案な魔法使いフィーネ、バカのサツキ、このD組の仲間5人でパンターに乗り、竜を討伐しよう! と考える。
しかし戦車はうまく扱えず、出掛けた討伐には予想以上の強敵が現れ大ピンチ!やべえどうするどうするやべえやべえ。

そんな感じ。


●感想

あのーおもしろかったですよ。
作者の内田弘樹という人は、初めて読んだけどなんでも「ノベルス」判の、仮想戦記モノ出身だそう。
なので、文章も最近のライトノベルにしては割とカッチリしているというか、鼻につくパロディーや浅はかなネット受けを狙った冗長な文章というものが少なくて、手固い印象でした。

それでいて世界観は『モンスターハンター』シリーズやMMO RPGのように「竜(敵)を倒して素材を剥ぎ、それをもとに様々な効果のあるアイテムを作ってまた戦いに活かす」という、ゲームをやっている世代にはすんなり入れるファンタジー世界設定。
(その設定が『ドラクエ』や『FF』的ではなく、『モンスターハンター』というところが、ああそういう時代なのだなあ!、という気持ちはあります)

ガルパン』では、主人公の西住みほが、戦車の操縦に精通したスーパー超人という設定だったので自然と車長になりましたが、本作では主人公のトウヤが車長ではなく装填手(弾を込める人)の役割を担ったり、キャラクターに合わせて振られた戦車上の役職が、うまく物語を彩っていました。
(モンスターや生物が苦手て、敵が近づいてくると失神してしまってキューポラから顔も出せなくなる車長のシェルツェとかね)

戦車の砲塔に大きな政権を備え付けて、戦車なのに剣戟が楽しめるというアイディアも秀逸です。(それだけにこれが今ひとつ生かされなかった感があるのは残念)
なんてーのかな、ガルパン』と『モンハン』を知っていて、そのどちらも好きな人、嫌いでない人であれば読んで楽しめると思います。

ただ、やはり文章で戦車の動きや激しい戦闘を描くのは難しさがあるだろうし、「そうだ!ここで超信地旋回だ!」とか言われても、分からない人にはサッパリその情景を思い浮かべられないでしょうから、やはりある程度戦車の知識がある人に限られてしまう部分はあると思います。
(戦車の知識つっても『ガルパン』見たことがあればまぁなんとなくわかる程度)

今どきのラノベの欠点がないのは良いのですが、逆に、ライトノベルらしい、手に汗握る戦闘描写や、物語に引き込まれてページをめくるのが止まらねえぜ!という没入感は、個人的にはもうひとつ惜しかった気がします。

あと主人公の性格がなんか合わなかったなあ。熱血?というかなんというか。
しかしまぁそこらへんは個人によるポイントとも思いますので。

まとめると。
仮想戦記出身の作者による、まさに仮想戦記的なファンタジー戦車小説。
落ちこぼれクラスの五人組で戦車に乗り、強いドラゴンと戦うというライトノベルだけどラノベ的な浮ついた描写は少なくて、ノベルス的な読み味です。
昨今の流行りに乗っかってない感じは、ライトノベルの古豪(?)レーベル富士見ファンタジア文庫の特徴でもあるのかしらん。(個人的にはとてもいいと思いました)
ただし反面、ラノベの本質でもあると思う、読みやすさ、文章の軽妙さには乏しく、硬い印象も。
読むのにも他のラノベと比べれば時間がかかるということはあるので、人によってはそこは注意が必要かもしれません。

例えば三人称視点じゃなくて、地の文を一人称視点にして書けば、作者の持ち味も活かしながら「ラノベ」っぽくできたんじゃないかなーと思ったりしたり。

そんな感じです。
ガルパンおじさんで『モンハン』の世界観を知っている人ならすっと読めるかと!
逆に、それらを知らなかったらキツイかも(笑)