『コミック百合姫』月刊化! 新連載10本など感想
写真はコミック2016/11/18発売の百合姫2017年1月号。
< コミック百合姫 - 一迅社 >
これまでは隔月刊での発行でしたが、今月号から月刊雑誌になりました!
< コミック百合姫、ついに月刊化!怒涛の10本新連載が巻頭カラーで始動 - コミックナタリー >
>コミック百合姫(一迅社)が、本日11月18日に発売された2017年1月号にて月刊化を果たした。以降、毎月18日に刊行されることとなる。
表紙のここにも書かれています。
(ここ)
月刊化!
巻頭カラー新連載10本!!
10本あるのに巻頭ってなんだよ!!
なるほど、つまり君はこういいたいのでしょう「頭はどこだ!」と。
そんなわけで(どんなわけだ)、月刊化を祝してというわけではないのですが、初めて買うにはいい機会だと思って、『百合姫』を購入してみました(電子書籍ですが)。
ちなみに、この機会に(?)一迅社は雑誌や単行本をすべて、紙のものと同日に電子書籍版も発売されるようになりました。
< 一迅社、コミック雑誌の電子書籍版を書店発売と同日に配信 - CNET Japan >
せっかく書いたので、簡単に『百合姫』1月号の感想と、10本始まった新連載の紹介などをします。数が多いのでどうしてもひと言ずつになってしまいますが、購入の参考になれば!
あおと響「明日、君に会えたら」
憧れのお姉さんに手編みのマフラーを渡せたと思ったら、寝て起きた後、なぜかおばさんになってしまっていたのだったという超展開。この後どういう話になるのか、ぶっちゃけ全然わからない(笑)。こ、これはあれじゃないのか、『まんが道』に出てきた『四万年漂流記』と同じパターンで、「作者は(ここで終わらせれば読む人の気が引けるだろう…)と思っても、やっぱりもっと読者にわかるようにしなきゃ…」というアレではないのか…。
未幡「私の百合はお仕事です!」
主人公、白木陽芽は常に外ヅラに気を使っている、将来の夢は「玉の輿」な女の子。ひょんなことから女学園喫茶で働くことになり、その独特のノリに困惑しながらも、先輩たちと仲良くなっていく(のか?)。主人公がノンケでコメディ分多めでおもしろそう。気に入りました。
どうでもいいけど百合姫は女性同士の同性愛(を含む広汎な意味合い)を「百合」と表現しているのに、その気がないヘテロ(ノーマル)な嗜好のことは「ノンケ」って言ってるのがちょっとウケる。なんというか…表現としてストレートすぎるというか…。「薔薇族」、「百合姫」のような高尚さ(笑)がナイですよね。
ノンケをあらわす文学的婉曲表現の登場が待たれる。
tMnR「たとえとどかぬ糸だとしても」
兄のお嫁さんで、幼馴染のお姉さんに恋してしまっている女子高生が主人公。そういう…ハードルが…あると…いいですよね…。ただでさえ女性同士というハードルがあるうえに、姉妹関係であるとかそういう障害が設定としてある作品が多いですね。百合モノには。(ガンガンオンラインで連載中の『兄の嫁と暮らしています』とか)
1話は、1年目の結婚記念日をド忘れしていた兄の代わりに、主人公と兄嫁が一緒に遊園地デートに行くという流れ。クライマックスの観覧車の中で行われる正統派百合展開が…いいですわね~…。
広瀬まどか「みみみっくす!」
動物の耳を移植手術できるという世界観の中で繰り広げられるケモミミ+百合。属性としては非常にわかりますが、個人的にはこう…重ねすぎではないかと…思います。足しすぎ感。うな重に穴子をとっぴんぐしてはいけないというか…。これはこれ、それはそれ、というか…。甘すぎて甘すぎてケモミミ百合は上級者。
椋木ななつ「私に天使が舞い降りた!」
女子大生のだめ人間系主人公とその妹、そして妹の友人が織りなす4コマコメディ。1ページに4コマしかないので、非常に読みやすく、ゲスカワイイ感じのネタが多くて好みです。しかしこの作品を単行本で買うかと言えばおそらく買わない。なぜかというと、だってコスパが悪いから! 同じ判型で同じページ数でも、1ページにえんえん4コマずつしか描かれていない(1パン的な4コマ漫画と比べても、半分!)なのは、ちょっと…。
それでも雑誌なら普通に楽しく読めるのが雑誌のいいところだと思います。
竹嶋えく「晴れの国のあっぱれ団!」
岡山を舞台にした、桃崎千春(主人公)、猿橋一千花、雉岡日向子、犬上つかさという4人が織りなす岡山コメディ。岡山コメディってなんだよ。といっても『お前はまだグンマを知らない』みたいに岡山あるあるネタがあるわけではなく、ふつうにカワイイ女の子たちを眺める系作品?
みかん氏「Now Loading…!」
ゲーム(ケータイのソシャゲ)制作運営会社が舞台。自分の担当しているゲームの運営終了を告げられ、失意の主人公高木は、先輩で憧れのゲーム制作者、桜月香に相談したりペットのネズミを探したり。ゲーム制作会社で百合要素と言えば『NEW GAME!』が思い出されますが、あれが家庭用ゲーム開発会社だたのにくらべ、これはソシャゲになっているのが時代というかなんというか、何かを感じますね。
梅原うめ「ロク+イチ暮らし」
小学生にしか見えない大学生の主人公が、同じ大学に通う人の住むアパートに入居して個性的な人々に囲まれるという1話。いろんな女子がいっぱいいるよ! という…西あすか「いつかみのれば」
突然ラスベガスに引っ越すことになった主人公が、ふと訪れたゲームセンターで、プロゲーマーを目指す少女に出会い、格闘ゲームの才能を見出される。
「私と一緒に格闘ゲームやろう。やってくれるなら、私があなたを世界で2番目にしてあげる」。
格ゲーフレームを語る女子高生というのがいいと思います。情報の正しさはどうなのかわかりませんが、まぁ格ゲーのタイトルが架空なのでそこはいいんじゃないですかね。百合マンガを描こうというときに、「格闘ゲーム」や「プロゲーマー」という材を持ってきたところがユニークですね。
惜しいのは格闘ゲームが格闘ゲームの絵に見えない…。女性漫画家(かどうかわかりませんが)は、格闘の動きとか描くの苦手なんやなって…。でも描き続ければそのうちうまくなる…なるはず…。長い目で見たい。
(格闘×百合要素でいえば、志村貴子『ラヴ・バズ』という女子プロレスの漫画があって、志村貴子というビッグネームですら、女子プロレスの格闘シーンは全然、全ッ然うまく描けていなかったので、だからまぁ、それはそういうものだと思うしかない)
Hitoto*「週末なにしにいこう?」
お嬢様と憧れのルームシェアを始める女子高生だったが、部屋の中にいたのは、オオカミのマスクをかぶった謎の女性!? とっぴなヒロインと出会って始まるルームシェアコメディー。……はぁ。多かった。
新連載だけで10本ですよ10本!
そして新連載以外の旧連載も充実のラインナップで
アニメ化企画進行中の義理姉妹百合漫画サブロウタ『Citrus』や
こっちもアニメ化するという彼氏持ち同士の百合という複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れる(百合だけに)コダマナオコ『捏造トラップ -NTR-』も大注目!
ていうか彼氏ふたりの小野Dと逢坂良太という布陣…。
あと武田は百合好きNTR属性になればいちばんいいポジションで、幸せ和を感じられるようになると思うよ。
なもり『ゆるゆり』や、大沢やよい『2DK、Gペン、目覚まし時計』など、安定して面白い作品が多くあって、以前からの読者も安心して読めると思います。『2DK』~は、単行本で読んでいたのですが、この回は主人公の菜々美が自分の気持ちをハッキリ自覚してしまうという、なかなか重要な回…!
ちなみに旧連載陣には、「これまでのあらすじ」的な紹介ページがついているので、ストーリーを理解できて、ここから読み始められます。
『捏造トラップ』は、同日に発売された単行本3巻からの続きなので、単行本派も雑誌派に切り替わるのによきタイミング!
(編集者募集の広告ページワロタ)
以上作品紹介終わり。
あとは雑感をつらつらと書きます。
今回初めて『百合姫』を雑誌で買いましたが、いや~、本当に徹頭徹尾百合作品なのですね!(当たり前)
百合のアンソロジー雑誌が月刊で発売されていくというのは、これはもう、すごいことです。
質量ともに日本一の百合マンガ雑誌と言っていいでしょう(対抗馬がどれだけいるのだ)。
でもって、まぁ百合作品が好きではあるのですが、こう続くと、その甘さに、さすがにゲップが出るというか、あれですね
『百合姫』は一気に読むものではない!(笑)
用法用量を守って正しくお使いください。
一日一作品ずつとかですね、ちびちびと読むのが精神衛生上いいと思います。
もう…すごい。
百合。全部百合。どこを…どこをめくっても…百合マンガなんだ…。
(なんて素晴らしい雑誌なんだ)。
ただ、一気に10本始まった新連載もそうなのですが、「百合マンガ」というざっくりしたカテゴリーの中でもやっぱり面白い漫画塗とそうでないものがありますね。でも逆に、その玉石混淆感というか、単行本では買わない、読まない、知ることができなかったであろう作品を芽にすることができるというのは、良いことなんだと思います。
あとコスパがいいですしね! 単行本だと150ページ程度で600円するものが、雑誌だと700ページくらいあって700円という安さ!(電子書籍なら紙質とか関係ないですしね。そう思うと電子書籍の単行本の価格が高すぎるのではないかという感じがしないでもないですが)
こと『百合姫』の中では、作品のウリが「百合」というだけではウリにならず、(だって全部の作品がそうなんだもの!)、「百合」プラスアルファーがなにか必要になってくるのでではないかという気がしますでも、それはそれで、百合だけの百合作品を書きたい場合、辛くなってしまうことがあるかもしれません。
やっぱり、ただ女の子が何人か出てきて、キャッキャするだけのマンガより、なにかもうひとつ要素がある漫画のほうが、印象に残りましたもの。だから実は
百合アンソロジー雑誌の中では、純粋な百合作品が描きづらい…なんてことにもなりかねないのではないでしょうか。杞憂かな。王道百合を描く場合は、かなり高いクオリティーが求められるでしょう。
そう思うと、戦国時代や時代劇のアンソロジー雑誌『乱』なんかも同じような悩みを抱えそうなものですが、どうなんだろう。
『百合姫』においては、ただ百合なだけでは生き残るのがつらそうですね。きちんと百合要素を織り込んだ上で、おもしろい何か(それはギャグでもいいし設定でもいいし、骨太なストーリーでもいいし)が無いと、やはり辛いでしょう。
でもまぁそれは、他の雑誌も一緒で、要するに「つまらないマンガは消え去るのみ」という原則。
だからふつうに、おもしろい作品は読むし、自分がつまらないと思った作品は読まなくなるでしょう。おそらく来月号も買う。本当はこれ紙で買えれば良いんですけどねぇ。個人的にも紙のほうが好きなのですが、置き場所がね…。雑誌は体積を持っていますからね…。食いますからね…。スペースを。
あーあ!北海道に住みてえなあ!!
あっでも雑誌の発売日おそそうだからやっぱり本州がいいや…。
この月刊創刊号は、ご覧の通りカラーページも異常に多いので、雑誌で買ったほうがお得というかなんというか。次号からはこんなに多くカラーページがあるわけではないでしょうし、買える環境の人は紙で買うのが良いと思います。
それにしても、あらためて、新連載が10本同時に始まって、そのすべてにカラーページ(巻頭)をつけるって、すごいよなあ。
いやもうなんかすごい…すごい雑誌だ。いろいろと。