明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

映画『JOKER』感想 いや~暗い!暗い映画だ!デートムービーに最適だ!

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台風も過ぎたし日本ラグビースコットランドに勝って決勝トーナメント進出を決めたし、余勢を駆って気分がスカッとする映画でも見に行くか!

そう思って観たのが『JOKER』。

気分が…スカッと…?

俺はいったいこの映画の前情報のどこを見て気分がスカッとすると思ったのでしょうね。

そんなわけで観たので感想をメモっておきます。


●そもそも

ジョーカーは『バットマン』の悪役。
本作は「なぜジョーカーは生まれたのか」というプレ・バットマンの物語となっていて、『バットマン』はおろか『ダークナイト』シリーズも見ていない俺は見てもいいものかどうかという不安はあった。

言ってみれば『マリオ』に対するクッパ誕生物語だし『ドラクエ3』で言えばゾーマ誕生物語だもの。

まあそれは杞憂だった。
バットマン』知らなくても全然オーケーです。バットマン出てこないし。


●話としては

売れないピエロのアーサーは、コメディアンを目指しているのだけど、持病もあってうまくいかず、考えるジョークは空回り。
認知症の母を介護しながらの二人暮らしは決して楽ではなく、それでも他人を傷つけることなく暮らしていた。
ある日、同僚から拳銃を手渡されたことがまさに引き金となってアーサーは歴史的ヴィラン(悪役)への道を転げ落ちるというかつっぱしるようになってしまうのだった…。

というもの。

●感想

いや~、暗い暗い!
まず設定が暗い!

「売れない芸人で独身でおじさん(見た目40代後半)」。
開幕から悪ガキどもにボコられるし爽快感というものの感じようがない。
それでいて撮り方も暗い!

話も暗けりゃ画面も暗い!音楽も暗い!ゴジラ(初代)のメインテーマくらい重たい! 怪獣出てくるのかと思うくらい!

そしてテンポが遅い! じりじりして話が進まない!

拳銃のくだりから少しストーリーが転がり出すものの、それまでは話が暗いこともあって本当に苦痛だし転がりだしてからも暗いことは変わらないし遅いのは遅い。

見る前にトマトメーター(評論家の評価の平均)の点数が低いのを見て「ネットの評判はいいのにな~」と思ってたけど、つまり評価で低得点をつけられるのにはそういうところを突っ込まれてるんじゃないかな。


●それでいて評価が高い理由は

主演のホアキンフェニックスの存在感、演技がすばらしくて撮るほうもそれをとてもフィーチャーした構図が多くて、ホアキンフェニックス頼りといってもいいくらいの画面構成だったりするんだけど、とにかく主演の、主演力。役者の持つちから。




そして何より世相。
世相ですよ。

孤独な男が社会から強烈な疎外感を感じて「世間の価値観とかじゃなくて俺が思うようにやったら後悔するどころかスッキリした…」みたいなテーマが、現代社会にぴったり寄り添うというか、とても共感したとは言いづらいほど現代の暗い欲求を叶えてくれている。

年収とか身長とか学歴とか出世しているとか結婚してるとか子どもがいるとか子どもが私立の小学校に行ってるとか旦那が会社の部長だとか、とにかくありとあらゆるところでマウントを取ったり取られたりしている現代社会。
「うるせえ、ぶっ殺すぞ!」って思うじゃないですか、マウント取られた方って、ふつう。
それを実行に移すことは法的にも倫理的にも許されることではないけど、やってくれたら、やっぱりちょっとスカッとしてしまうじゃないですか。

単純な下層社会民が上級国民を相手に暴力を振るって下克上じゃガハハ!というのもあるんだけど、あとそれ以上に、自己承認欲求が肥大化した現代だけど、誰もがそれを満たされないような気がしている。自分はないがしろにされている。そう感じている。それを吐露するクライマックスシーンがとてもよかった。

コンプライアンスとかポリティカルコレクトネスとかうるさいんじゃばかしね!って、口に出したくても出せない、あるいは心の奥底に感じてしまうものを代理的に叫んでくれた映画だからこそウケている、ウケているというか、ある種の人たちに共感されているのではないかしら。

怪獣映画で街が破壊し尽くされるシーンって、悲しさもありながら、どこか「やっちまえ、やっちまえ」って気持ちあるじゃないですか。
…え…あるよね…?

この映画は街そのものは破壊しないかわりに、社会秩序や、人間がギリギリ守っているルールや法律や、社会を成り立たせている価値観みたいなものをぶっ壊してるんですね。そこに、抗いがたい快感がある。
それが悪役の魅力というか、この映画独特の背徳の味わいを生んでいる…。

人間が持つはずの、隠れた欲望、人が必死で圧し殺している欲求を暴きたてられるような気持ちよさがある…。

それにしても、ジョーカーに感化されてゴッサムシティが炎上してゴッサム祭りじゃワッショイワッショイになるシーンは、近未来の社会を描くようでそら恐ろしくもありつつ、どこかでほんの少し、こうなることを望んでいるような、破壊願望というか、転落願望というか、「ああ、社会なんてものが滅茶苦茶になってしまえばいいのに!」と思っている隠していた心を見透かされたかのような。そんな印象的なシーンでした。

そして炎のなかでステップを踏むジョーカー。

うひょ、かっこええ…。


●視聴直後の感情は

全体的に暗いし遅いし悲しいので、スッキリはしないし爽快でもないです。
それでもなんだか見てよかったなあ、現代的だなあ、俺も明日はもう少しマシに生きなければなあ…となぜか一周回って前向きな(?)気持ちになるのは、何年か前に物議をかもしたNHKスペシャル無縁社会』を見たときに近い。

だから『JOKER』はほとんどNスペです。
(いまググったらあれ2010年の番組だって…もう10年前になっちゃうじゃん…吐き気を催す)。
(もちろんあの頃もいまも独身無縁社会人)。


●そんでこの映画をカップルで見に来ている若人たちよ

君らその選択でいいのか?

この映画見たあとに二人でどんな感想を語り合うというのか?

彼氏が「こんどこれ観に行こうよ」って言い出したらちょっと嫌だと思うし、彼女が言い出していたのだったらもっとドン引きの感があるけど…。

だってデートで「NHKスペシャル無縁社会』見ようよ!」って言うようなもんだぜそれ。

でも、ふたりで『無縁社会』を見て、その後楽しく語らうことができるのであれば、それはもうさっさと結婚した方がいい相性のよさ。

そういう意味ではふたりの相性を測るためにデートムービーに最適な映画かもしれない。

『JOKER』を一緒に観たあとに笑って感想を言い合える相手と結婚しなさい。