明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

映画『鹿の王』感想

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鹿の王観てきた。

あらすじ
10年前に大国に攻め込まれた小国。
主人公のヴァンは大国を敵に回して退かぬ勇猛な戦士であったが、囚われて岩塩坑の奴隷となっていた。
岩塩坑を狼の群れが襲う。
狼は《黒狼病》なる伝染病の媒介動物で、狼に噛まれた監視員たちは全滅。
ヴァンは同じく狼に襲われていた赤子ユナとともに逃亡の旅を始める…。

感想
いいところもあり、悪いところもあり。

メチャクチャおもしろい!必見!というテンションではないものの全体としては高いクオリティーに落ち着いていて、観て損はしない出来と思う。

描くのが難しいと言われる馬の動きや、架空の動物《ピュイカ》(大きな鹿)の動きも不自然ではない。
監督はなんでも『もののけ姫』で作画監督を務めていた人ということで、全体的な作画は安定してきれい。
戦闘シーンもありけっこう動く。
レイアウトも凝ってて、ただの遠景の場面でもパン振りが多くて見る目を飽きさせない。


悪い意味で目についた点としては、アレ原作からの改変なのかなあ、なんかすげー高い竹馬でで攻撃してくる奴っていたっけ?よしんばいたとしても、そこは改変してなしで良かった感。
あと狼の変なオーラとか、超常的な能力を持つかのような演出。
原作を読んだのが一年以上前でたしかではないけど、全体としては「近世程度の架空の文明で、架空の国の陰謀がありつつ凶悪な伝染病を一つ大きなアイテムとしてストーリーが転がり、その対策と治療に奮闘するイシトも見どころ」的な感じだった気がする。
世界と自己の関係性みたいなところもテーマではあるけど、それが映画ではうまく消化しきれてなくて宗教っぽくなってるというか浮いたシーンになってしまってる。

架空の近世文明の描き方はいいと思いました。ピュイカの乳もうまそう。

おそらくこれは想像だけど、映画の制作が始まってあるいは始まる頃にコロナが蔓延して、伝染病を扱うことに必要以上にセンシティブになって、気を使いすぎた。
「コロナ(的な病気)を映画に使ってエンタメとして弄ぼうだなんて、不謹慎だ」という批判を恐れたのではないかしら。
けどそうじゃなくて、逆に、現実世界がこうなってしまったからこそ、踏み込んで、伝染病は怖いんだ、黒狼病の治療法はないんだ、まかり間違えると国が滅ぶんだ、全員死ぬんだ…と、言わないと、この現実世界のなかでいま見ると、何しろヒトからヒトへの感染が描写されてないので、「いや黒狼病全然大したことなくない?要するに狼に噛まれなきゃいい狂犬病みたいなもんだろ」って思っちゃう。
とはいえそのへんは半年とか1ヶ月で現実世界の風潮が激変してしまうので、制作側にもいかんともし難いところだったであろうな。


監督の出自がジブリにあるというのもあり?ジブリ感があるけど、そのジブリ感が感で止まってしまっていて、
なにかに振り切れるということがなくて、エンタメなのか剣戟アクションなのか国と国の争いなのか壮大なテーマ性なのか突き破るキリがなくて
アニメという枠、ジブリっぽい作品という枠の中で縮小再生産になってしまってやしないか

端的に言うと「これジブリが作ったら、宮崎駿が作ったら、(原作はメチャクチャ改変されたかもしれないが)もっとおもしろくなったろうな〜」ということは思ってしまう。

とはいえ分厚い上下巻の小説を2時間弱によくまとめている。佳作。

でも、「よくまとまってる」というのは、創作物にとって、本当に褒め言葉だろうか。