明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

『春ゆきてレトロチカ』感想メモ

実写ミステリアドベンチャーゲーム『春ゆきてレトロチカ』をクリアーしたので感想をメモ。
核心には触れないもののあらすじ程度のネタバレあり。

 

●あらすじ

ミステリ小説家の河々見はるかは、編集者の山瀬明里とともに、四十間永司の実家・四十間家を訪れる。

四十間家には不死の伝説があり、食べると不老になるという果実“トキジクの実”を当主が受け継ぐという習わしがあった。

 

その受け継ぎの儀式を行う桜の木の下に白骨死体が埋まっているというニュースが世間を騒がせ、永司はその白骨死体の正体と、トキジクの実についての調査をはるかに依頼したのだった。

はるかが四十家を訪れた日、殺人事件が発生する――。

 

●ゲーム内容

四十万家に伝わる謎を、過去の書物や大正時代の小説(小説の体をした実体験文)などから読み解き、最後に現代の殺人事件を解決する。

それぞれの事件ではるかが謎解きの探偵役となり、手がかりをもとに犯人に迫る。

ひらめきや推理などシステムはかなり工夫されていてドラマを見るように、小説を読むように楽しめる。

それなりに頭を使わなければならないものの基本的にはコマンド選択なのでクリアー自体はできるようになっているはず。

 

●感想

全体としては楽しかった。ドラマ感覚で楽しめる良作ミステリゲーム

実写のゲームって珍しいから好きだな。

古くは『街 ~運命の交差点~』とか『428』とかのサウンドノベルもあるけど、これは殆どが動画でよりドラマっぽくなった。

ストーリーや映像も全体的にクオリティーが高くて最後まで楽しめたのがよかった。

 

最終的には壮大な謎になるものの、個別の話は1話1~2時間程度のプレイ時間になってて気軽に遊べるのもドラマっぽくて現代的。助かる。

大正レトロなシーンとか、「プレイヤーに真犯人を当てさせる!」という気概のあるゲームに仕上がっているのは好印象。つまりプレイヤーのことを信頼しているというか、1から10まで懇切丁寧に解説するのではないゲームデザインになっていた。

 

こういう謎解きアドベンチャーゲームは「クリアーしてほしいけど全員にとって簡単だったらつまらない」という難しさがどうしても付きまとうと思うけど、(急に脱出ゲームになるところ以外)クリアーまでそう詰まるところなく進行できたのはよかった。

やっぱりエンディングまで行くとゲームには他のメディアにはない満足感が生まれる。

 

気になった点

逆に気になった点やストレスになった点もいろいろ挙げておく。

文章の量はこちらのほうが多くなるだろうけど、それは「全体に文句のほうが多い」ということではなくて、丁寧に説明しようとするとどうしても煩雑な内容になるから仕方ないのであって、全体として楽しめたというのは繰り返しておく(あとミステリだから褒めようたってストーリーやトリックや謎解きを詳細に説明できないのもあるし)。

 

ユーザーインターフェース(UI)やや分かりづらい

ひらめきタイムのUIが独特で、手がかりを当てはめる際にZR(R2)でつかんで動かすというのになかなか慣れなかったり、置けるところの色が変わるという仕様に気づくのにすこし時間がかかった。

 

実写だからこその“不死の実”への違和感

実写なのは本作のユニークなところで際立たせている長所なんだけど、逆にそれが難しいなと思うところもあり、たとえば作品のリアリティーラインとして、“不老”というのは、実写で作品を作ったときに、やっぱり現実にはありえないことだから、ナシだと思う。

始皇帝が水銀を不老の妙薬と思って飲んで水銀中毒で死ぬというのが現実世界のリアリティーだけど、作品では不老はある前提になってて、せめて登場人物が「不老なんてあるわけないだろ!」という態度でいてほしかった。

これがアニメ絵の空想科学アドベンチャーとか、『かまいたちの夜』方式のシルエットであればそこまで違和感はなかったかもしれない。

章クリアー後の評価システムは本当に必要?

各シナリオクリアー後に、プレイヤーにはS~D(?)の評価が下される。アクションゲーム『ベヨネッタ』とかにもあるシステムではあるんだけど、これって個人的には不要だと思う。

Sが取れても別にうれしくないし(一度も間違わなかった謎というのはその程度の難易度の謎ということだ)、かと言って難しい章で何度か間違えてDって言われると腹は立つ。

百歩譲ってアクションゲームならまだ繰り返しプレイをして腕を磨いて、ノーダメージクリアーをするとかひとつのモチベーションになるかもしれないけど、このゲームの場合、要するに犯人とトリックと正しい選択肢を覚えて(あるいはメモって/攻略サイトを見て)、それを選ぶだけになるだろうし。

何より、メインのストーリーの大きな謎を、(プレイヤーが数度間違えたとしても)ストーリー上は無事解決できて「ああよかったよかった」と思っているところに「ところでお前は選択肢○回間違えたから評価Dね。よっ、ダメ探偵!」って冷水ぶっかけられて喜ぶ人は少ないのではないか。誰がどの立場で評価してるのあれ。

SやAをいくつとっても、不可解な謎に引っかかって1~2度「D」と言われてしまったら、やはり後者の嫌な思いのほうが強く印象に残ってしまう。

最終章にもっと爽快感がほしい

クライマックスになる犯人当てが「うわ~~~~コイツが犯人だったのかあ~~~~意外~~~」というのではなく、「うわ~~~こんな秘密があったのかあ~~~超驚きぃ~~~」ということでもなく、割とカッチリしたミステリ論法というか、「この人はこのアリバイがあるからできない」、「この人はこの理由があるからできない」、じゃあ残るのはこの人……? という消去法で選んでいくのが、ミステリ小説としてはあっているのかもしれないけど、ゲームとしてはもうひと声ほしかった。

消去法で絞り込んでいくのであれば、ゲームの進行としては「犯人はこいつだ!」と一発で当てさせるのではなくて、「犯人としてありえないのはこの人だ、理由はこれこれこうだから」という細かい謎の提示と解決を繰り返していくほうが、ストーリーとプレイヤーの感情がシンクロしやすかったのかな。

実写ゲームならではの難しさ

たぶんだけど、作ってる側も「ここもうちょっとわかりやすくするためにこうしたかったなあ」という思いはテストプレイのときとかに出ていたはず。だけど難しいのが、実写の場合は「じゃあシナリオやセリフをいじって撮り直そう!」というのはできない。正確に言うとできないことはないだろうけど費用や時間が膨大にかかるようになっちゃう。

だから、ミステリー系アドベンチャーゲームに重要な「いかにプレイヤーを正答に誘導しつつ、でもちょうどよくわからないくらいの謎感を残すか」という調整が難しかったのではないかな(ほかの『かまいたちの夜』みたいなサウンドノベルとかがすべてうまく行っているとは言わないけど、調整の容易さの問題)。

 

総合

とはいえ繰り返して言うように全体としては楽しめた。「これおもしろい?」って聞かれたら「ちょっと引っかかるところもあるけどおもしろかったよ」と答えるだろうし、ミステリファンとかサスペンスドラマが好きな人とかにもふつうにおすすめできる佳作と思いました。

実写ゲーはたまに出るとうれしい。細く長く続け実写ゲームの火。