のらくろは最後に…『のらくろ喫茶店』
漫画の『のらくろ』ってあるじゃないですか。
あれのシリーズの『のらくろ喫茶店』っていうのが図書館で貸し出ししてまして
それがなんだか心にじんわりとくるいい話だったので引用しつつ紹介したい。
表紙がオシャレ。
話はタイトルの通り
もともと軍隊にいた(二等兵から大尉にまでなった)のらくろだけど
戦争が終わってなにか生きるすべを見つけなければならなくなった。
それで旅館で働いたり石炭会社で社会人野球選手になったり(『のらくろ放浪記』)
探偵をやったりしていたんだけど(『のらくろ捕物帳』)、どれも長く続きません。
「何か特技を身につけなければならないよ」
と言われて働き出したのがコーヒーがおいしいという喫茶店。
とはいえ喫茶店で働くことに関してはズブの素人ののらくろだけに…
やることなすこと失敗ばかり。
とぼけた味わいのある微笑ましい光景が繰り返されます。
それでもなんとかコーヒーを入れる技術を身につけて…
軍隊の知り合いで金持ちになったやつが金を出してくれることになり
自分の店を持つことに。
「店を持てば嫁さんがいなけりゃあ」。
そうだろうか。
そういうものだろうか。
別に一人でやってみて間に合わないほど忙しければ人でも雇えばいいと思うけど…。
こういうセリフ一つ一つに
昭和の価値観というか人生観がよく現れていて
読んでいておもしろいですね。
嫁の当ては「おぎんちゃん」という焼き鳥屋のうちの可愛い犬。
戦争中は慰問の手紙をもらっていたりしたそうなので
読んだこと無いけど前シリーズにも出てるのかな。
そんで、ここでも一悶着あるのですが
とにかくめでたくおぎんちゃんを嫁に迎えることができました。
結婚式を挙げたあと
「ぼくは永い間孤独だったが結婚して家族ができた」。
「だからもうのらいぬではない」。
とぼんやり考えるシーン。
「でも名前はやっぱりのらいぬ黒吉だ」。
軍人だったんですよ。
二等兵だったんですよ。
二等兵から出世して大尉になるまで戦った歴戦の軍人が
戦争が終わって喫茶店のマスターに据わって新しい生活を作り上げるに至るまで…。
日本は平和になったのだと。
のらくろはもう戦場へいかなくていいのだと。
そう思うと、じんわり胸が熱くなりますね。
(まぁ、巻末の年表を見ると『のらくろ中隊長』は戦後の昭和30年代に連載されていたそうなので
. 終戦後すぐにこんな平和な生活になったわけではないですが)
最終巻となったこの『のらくろ喫茶店』の巻末では
夫婦揃って正座して、読者に向かってご挨拶。
今どきこんな礼儀の正しい終わり方をする漫画がありますか!
挨拶ですよ挨拶!
心がほっこりしますよ…。
これ図書館の本なので、手でこわごわ抑えながらそっとコマを撮りましたが
面白かったし自分でも買っちゃおうかなー… と思ったら…
一冊3,570円するんですよ(白目)
なんでこんな高値になるかというと
復刊ドットコムというサイトで作ったほとんど受注生産みたいな小口の出版だからですね。
ちなみに、復刻版でない昭和56年出版の『のらくろ喫茶店』はヤフオクで8,400円してました。
ぐっ… ぐぬぬっ…
高い…。
こういう古い名作マンガこそ電子書籍で安く出版されてほしいものですが。
どうにかしてくれ講談社。
著作権が切れれば配布されるようになるかもしれないのですが
調べたところ作者の田河水泡さんは平成元年になくなっているので
著作権が切れる作者の死後50年まで今年がちょうど折り返し。
あと25年かかります。
うーむ。
あとヤフオクで検索してみたら、昭和44年に紫綬褒章受賞を記念して出版された
『上等兵』~『探検隊』10冊セットが6,300円+送料1,000円で出てるんですよね…。
1冊あたり730円…。
お買い得に感じる… 買っちゃおうかなー…。
しかし… しかし… かかし…。
うーむ…。
あとちょっといいなと思ったのが
この『のらくろ喫茶店』もそうなのですが
その前のシリーズも表紙のデザインがオシャレなんですよね。
昭和のデザインとして額に入れて飾っておきたいようなステキデザイン。
いいなあ…。
ぼかぁ好きだなぁ、ぼかぁ…。
ハッ、自分の口調まで昭和に戻ってしまった。
まあそれは置いていて。
有名なのらくろシリーズの最終巻、『のらくろ喫茶店』、名作なので
どこかで見かけたら読んでみてくださいね。