明日はもうすこしマシにします

日記のブログです。ヤフーブログから引っ越したので過去記事には不具合があるかも(2019年10月)。見たり読んだりししたものや考えたりしたことを忘れないうちにメモっておこうというもの。ヤクルトファン。

富山の銭湯「観音湯」無くなる前に行ってきました

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写真は富山市にある…あった銭湯、「観音湯」。
3月末で閉店しました。

< 名残惜しみ さらば 富山の観音湯、84年の歴史に幕 - 北日本新聞webun >

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< 富山 山男に親しまれた銭湯閉店 - NHK >

1930年代から商売を始め
富山大空襲で焼失したあと戦後に建てなおされたという建物が
なかなか趣深い外観で、繁華街の中で目立っていました。

昔は立山登山に来た客がよく利用していたそうです。
確かに駅のすぐ近くにいつでも入れる銭湯があると
新幹線や深夜バス全盛期の現代でも便利ですもんね。

旅先でオフロに入ってサッパリして帰るときの心地いい感じというのは
なかなかのものです。


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染め抜かれたのれんをくぐると


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謎の…あのーこれなんて言うんだっけ
三助じゃなくて… 代介じゃなくて…
なんか名前があったはず…

あの… 焼き物の… たぬきとかエビスさんみたいな感じで使われる…

福助だ! 福助! 福助

それの謎の壁画。
謎ではありますがまあ縁起がいいのでいいでしょう。


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男湯はこちら。
ガラス戸に「男」と実に男らしい文字で書かれています。
まぁ女湯にも「女」と男らしい文字で書かれているのですが。


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入り口にはこんな張り紙も。
なんでもない紙に何でもないマジックで書かれた簡単なお知らせが
なんとも無常感を感じさせます。

いつもどおりに営業していつもどおりに閉店していくんだろうなあ。
たぶんそれでいいんだろうなあ。

脱衣場のなかからは当然写真は撮っていませんが
湿気を抜くため、吹き抜けのように高い格子天井で実に趣があります。
東京で入ったことがある「燕湯」みたいでした。

お風呂場はタイルで照明はむき出しの蛍光灯が白くわびしく光ります。
お世辞にもキレイとは言えませんが
風呂に満たされたお湯は熱く
シャワーやカランから出てくるお湯は大量で
昨今のスーパー銭湯にありがちな
ケチケチしたお湯の出しっぷりとは違う
節約とか節水とかあまり考えない昭和の銭湯の気前の良さが感じられます。

そして特筆しておくべきは風呂場の絵。
普通銭湯のタイル絵といえば富士山。
さらに言えば三保の松原

しかしこちらのタイル絵は
勢い良く流れる緑の川と、両岸に並ぶ松。
ここまでは一緒なのですが
その奥に立つのは白く冠雪し右から左まで険しい鋭角が次々と現れ
青い空と白い山でギザギザの山際を描く雪の立山連峰でした。

なるほどなあ。

なるほどなあ、ですよ。
なるほどなあ、でしょうよ。

今その山を登ってきた山男たちが
あるいはこれからその天嶮に挑もうとするむくつけき山男たちが
英気を養うために、山の埃を落とすために浸かった風呂ですもの。

見上げて眺める大きなペンキ絵の題材は
ここから遠く離れた概念、キャラクター、ステロタイプだけの富士山よりも
街の向こうに霞を乗せて実際にその姿を見せている立山連峰の方がふさわしいに違いない。

この風呂に浸かって、このペンキ絵を眺めた山男たちが大勢いたことでしょう。
雄大立山の姿を見ながらのぼせるまで風呂に入った子供たちも沢山居たことでしょう。
そんな歴史のあるだろうという銭湯が姿を消しました。

その古めかしい佇まいがずっと気になってはいたんですが
閉店する前に入ることができてよかった。
たった一度の入浴でしたが間に合ってよかった。
80年の歴史のケツのケツにねじ込むことができてよかった。
長い歴史の万分の一以下だろうけれども
この銭湯の客になることができてよかったなあと。

思うのです。